昨今、フィットネスクラブは増加傾向にあり、特に忙しい現代人のライフスタイルに合わせて、24時間ジムが急速に増えています。こうした背景のなか、開業を検討する方も多いでしょう。しかし、経営するうえで重要なポイントを把握しないまま開業することは、リスクが伴います。この記事では、ターゲット顧客の分析や競合リサーチ、お客さまが使いやすいシステムの導入といった、24時間ジムを開業し、経営を成功させるための具体的な方法をお伝えします。
INDEX
1. ジムの営業を24時間にするべき理由
24時間営業のジムは、時間帯に左右されず利用できて利便性が高いため、集客力の向上が期待できます。昼間に働く方や夜勤の方など、さまざまな生活スタイルの方を集客対象とすることができます。無人営業にすることで、人件費の削減も可能です。
一方で、近年出店数が増加傾向にあるため、経営に成功するためには、競合店舗に勝つための工夫が必要になります。
2. 24時間ジムを開業するメリット
ジムを24時間営業にするメリットについて、具体的に解説します。
2-1. 幅広い層の集客が可能
24時間営業のジムは、お客さまにとって利便性が高いため、幅広い層からの集客が可能になります。時間による制限がないため、昼間に働く会社員から、夜勤やシフト制のアルバイト、主婦や学生、高齢者まで、多様な層に対応でき、通常の営業時間に限りがある店舗よりも、幅広いニーズに応えられます。
2-2. 無人営業にも対応できる
無人営業にすることで、人件費の削減やスタッフの労働時間規制への対応が可能で、効率的な運営が実現できます。たとえば、日中に利用するお客さまが多く、深夜は少ない場合、日中には受付スタッフを配置し、深夜は無人にすることで、人件費を削減できます。
2-3. 仕入れがなくランニングコストを抑えられる
24時間ジムは、主にマシンを利用したトレーニングがメインとなるため、一般的に、飲食物を提供していない店舗が多いです。飲食業界における食材のように、日々の仕入れがないため、ランニングコストを抑えられます。店舗内での飲食物の提供がないことで、食品の仕入れや衛生管理にかかるコストも抑えられます。
3. 24時間ジムを開業するデメリット
24時間営業のジムの開業は、多くの需要に応えられる一方で、デメリットもあります。デメリットを把握して適切な運営を行うことが、経営成功のポイントです。
3-1. 競合が多数存在する
24時間ジムの人気に伴い、多くの競合が参入してきており、独自のサービスやレッスン、プログラムなどがなければ、集客が難しい状況です。対策としては、競合店舗の調査を行い、地域やターゲット層に合った独自のサービスやレッスン、プログラムを開発するとよいでしょう。たとえば、地域の特性に合わせたレッスンやプログラム、特定のターゲット層に向けたスペシャルイベントを企画することで差別化を図ります。
独自性があるサービスやレッスン、プログラムを打ち出すことで、他の24時間ジムでは体験できない価値を提供し、既存顧客のリピート率や継続率の向上、口コミでの新規顧客の集客力向上を狙うことができます。
3-2. 月会費の低価格が進み利益率の低下がみられる
市場競争の激化により、月会費が低価格化し、利益率の低下が進んでいます。そのため、コスト削減や集客力向上に努めなければなりません。効率的な運営を行い、ランニングコストを抑えつつ、顧客満足度を上げるサービスやレッスン、プログラムを提供しましょう。グループレッスンやパーソナルトレーニングなどの付加価値の高いサービスを提供し、月会費以外の収益源を確保するとよいでしょう。
3-3. 優秀なインストラクターやトレーナーの確保が必要
顧客満足度を向上させるためには、優秀なインストラクターやトレーナーの確保が不可欠です。マシンの性能や料金プランで差別化を図ることには限界があります。業界経験が豊富で専門性があり、コミュニケーション能力の高いインストラクターやトレーナーを採用すると同時に、在籍しているメンバーに対する育成・研修プログラムを設け、質の高い人材になるように育てましょう。
また、研修制度や福利厚生を充実させ、長期的な雇用安定を図ることも重要です。優秀なインストラクターやトレーナーが在籍していることで、顧客満足度が向上し、自然と口コミによる集客力も上がります。
4. 24時間ジムを開業する際の費用
24時間営業のジムを開業する際の費用は、最低でも数千万円程度必要ですが、この金額は経営方式によって大きく変わります。経営方法が個人経営であれば、マシンの台数や内装工事、物件の状態などの費用がかかる項目について、経営者の裁量と工夫で費用を抑えることができます。
一方で、フランチャイズで経営する場合、フランチャイズ本部から導入するマシンの機種や台数、内装、物件などに条件の指定がある可能性があります。加えて、加盟金や保証金の支払いも発生するため、加入先によっては開業費用は高くなる可能性があります。
個人経営で開業する場合に必要な費用の内訳としては、下記のとおりです。
- 物件費
物件の賃貸や施工にまつわる費用です。賃料は、立地条件や広さによって異なります。施工費用は、居抜き物件なのかスケルトン物件(何もない状態から設備を導入していく形になる)なのかによって大きく異なるので、予算にあわせて物件を探すことをお勧めします。 - 設備費
主にマシンや器具などの導入費用です。鏡、マット、ダンベル、大型トレーニング機器など、どのマシンをどの程度導入するのかによって異なりますが、最低でも数百万円はかかると考えていたほうがよいでしょう。また、サウナやプール、シャワールームの導入有無によっても金額は大幅に前後します。 - 内装費
床や壁をはじめ、受付やロッカールームなどを整えるための費用です。飲食スペースを作るかどうかや、物件の広さによっても金額は大幅に変わります。内装費を抑えたい場合は、居抜き物件を活用するとよいでしょう。 - 消耗品費
お客さまが使うものや、運営にあたって必要な消耗品の購入費です。数十万円程度かかるケースが多いです。
5. 24時間ジムを経営する際のポイント
24時間経営のジムを開業する場合、いくつかの押さえておくべきポイントが存在します。これらのポイントを把握し、適切な施策を実施することで、経営失敗のリスクを低減できます。
5-1. ターゲット顧客の分析をする
24時間ジムの経営を成功させるには、ターゲットとなる層を明確に把握し、そのニーズに応えるサービスやレッスン、プログラムを提供することが重要です。具体的には、店舗の周辺地域(商圏)に対して市場調査やアンケート調査を実施し、年齢層、性別、職業、運動習慣などの情報を収集します。
これにより、ターゲットとなりそうな層の割り出しやその層の特徴を把握し、適したレッスンやプログラム、設備の準備を進めます。たとえば、主婦層をターゲットにする場合、子どもを連れて来られるスペースや女性専用のエリアを設けることなどが考えられます。ターゲット層の属性や運動習慣、ニーズを把握し、適切なマーケティング戦略を立てましょう。
5-2. 競合店舗のリサーチをしてオリジナリティを出す
競合店舗のサービスやレッスン、プログラム内容、料金プランなどを調査し、自店舗との比較を行います。その上で、独自のサービスやレッスン、プログラムを開発し、差別化を図りましょう。たとえば、オンラインレッスンの提供や、特定のスポーツに特化したレッスンやプログラムを導入する、などです。
5-3. お客さまが使いやすいシステムを導入する
24時間ジムでは、お客さまがいつでも気軽に利用できるよう、使いやすいシステムを導入することが重要です。たとえば、入退室には、ICカードやスマートフォンアプリを活用し、セキュリティ面を確保しつつ、お客さまがスムーズに入退室できるシステムを導入するとよいでしょう。
レッスンやプログラムの予約、決済についても、スマートフォンアプリやWebサイトを活用して、お客さまがいつでも簡単に予約したり、申し込んだ時点で決済できるような仕組みを整えると顧客満足度も向上します。
6. 24時間ジムの経営で利益を出すためのコツ
24時間経営のジムでは、通常のジムにくらべ、営業時間が長いぶんランニングコストが高くなります。24時間経営のジムの利益を最大化するためには、コストを削減することが特に大切です。コストを削減すべきポイントは、以下のとおりです。
6-1. 無人営業を取り入れる
無人営業にすることで、人件費を削減し、利益率を上げられます。具体的には、深夜や早朝など、お客さまが少ない時間帯に無人営業を行い、お客さまが多い時間帯はスタッフを配置するなど、時間帯によって適切に調整します。
無人営業だと安全性に不安があるというお客さまもいるので、カメラやセキュリティシステムを導入し、安全性を確保しつつコスト削減を図りましょう。顧客満足度向上にもつながる施策です。
6-2. システムの導入をする
会員管理や予約管理、運営管理を効率化するために、専用のシステムを導入しましょう。システムの導入には費用がかかりますが、長期的に見れば運営にかかる手間やコストを削減し、利益率を上げることができます。また、収集した顧客データを活用して、店舗の利用状況や会員の動向を分析して継続率の向上や来店回数の増加などを図ることで、経営を改善できます。
6-3. 店舗の規模を小さくし、初期費用を抑える
初期投資を抑えるために、店舗の規模を小さく抑え、利益が出るにつれて規模を拡大する戦略をとるとよいでしょう。また、運営コストを削減するために、省エネルギー設備やLED照明などを導入し、電力消費を抑える工夫も有効です。
特に、24時間営業のジムでは、営業時間に限りがあるジムに比べて、電気代や水道代などのランニングコストが高くなる傾向があるため、省エネルギーに配慮することは重要といえます。
6-4. ターゲット層ごとに利用料を細かく設定する
お客さまのニーズに応じて、料金プランを細かく設定し、幅広い層を取り込むことが重要です。たとえば、学生やシニア向けの割引プラン、オフピーク時間帯の割引プラン、月額制プランや回数券など、さまざまなプランを用意するとよいでしょう。
7. まとめ
24時間ジム開業は、ターゲット層の広さやコストの面でメリットが多い一方で、競合店舗の存在や優秀な人材の確保が必要である点などがデメリットとして挙げられます。経営を成功させるためのポイントは、「ターゲット層の分析や競合店舗のリサーチを行い、独自性を持ったサービスを展開すること」です。
お客さまが使いやすいシステムの導入や、無人営業を取り入れること、各種コスト削減も重要です。また、インストラクターやトレーナーの採用・育成に力を入れ、サービスやレッスン、プログラム面での差別化を図ることも求められます。これらの要素をうまく組み合わせ、効率的な運営と付加価値の高いサービス提供をすることが、24時間ジムの経営を成功させる鍵になります。