福岡を中心とする西日本で店舗を展開している女性専用のセミパーソナルジム「プリッツジム」。同ジムを立ち上げた芝 卓史氏は、長年マーケティング会社に従事する一方で、ブラジル発祥のスポーツであるフレスコボールの選手としても活動しています。同氏に、店舗づくりにおけるこだわりについて聞きました。
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PROFILE
芝 卓史 プライアスタ合同会社 代表
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、旅行代理店や広報代理店、SEOコンサルタント、アフィリエイト広告代理店とマーケティング畑を中心にキャリアを重ねる。2021年に女性専用のセミパーソナルジム「プリッツジム」を立ち上げると、通いやすい価格でありながらパーソナルに近い丁寧な指導が受けられることが好評を得て、西日本を中心に店舗を拡大中。
フレスコボール日本代表選手としても活動し、これまでに日本ランク1位を3回獲得、2018年には発祥の地であるブラジルの選手権で3位となるなど、日本のフレスコボール界を牽引している。
1. アスリート・会社員・起業家の「三刀流」──パーソナルジムに魅了され立ち上げた女性専用セミパーソナルジム
—— 芝さんは会社員として働きながら、長年ブラジル発祥のスポーツ、フレスコボールの日本代表選手として活動されていたのですね。
はい、その時の経験がプリッツジムを始めるきっかけになりました。海外の選手は体格が大きく、彼らに勝つためにはフィジカルを強化する必要性を感じたんです。そこで、パーソナルトレーニングジムで筋トレを始めました。
筋トレは好きではありませんでしたが、担当してくれたトレーナーさんが一所懸命励ましてくれたおかげで頑張ることができて、トレーナーという職業やパーソナルジムというビジネスのすばらしさを感じました。副業でメディア事業をしていたのですが、本格的に自分でも会社経営をしたいと思い、ジム運営に挑戦することを決めました。
—— 女性専用・3人までのセミパーソナル形式にしたのはなぜでしょうか。
一般的にパーソナルジムは会費が高くて継続しやすい価格とはいえません。トレーナーの労働環境を悪化させずに、お客さまが無理なく続けられる価格を提供するにはどうすれば良いかと考えた結果、セミパーソナルに行き着きました。セミパーソナルであれば、個別指導の質を保ちながらも複数のお客さまに対応できるので、コストを抑えつつ質の高いサービスを提供できると考えました。
3人としたのは、周囲のトレーナーに相談したところ、一人ひとりのお客さまに最適なメニューを提供しつつ指導するには3人が限界ではないか、というアドバイスを受けたためです。福岡は女性の人口比率が高いことや、より安心して通っていただける環境を提供したいと考えた結果、女性専用・3人までのセミパーソナル形式になりました。
2. 労働環境の良さが質の高いサービス提供につながる。トレーナーがいきいきと働ける環境作りへのこだわり
—— プリッツジムを運営する上で大切にしていることはありますか。
この業界で働いてくださっているパーソナルトレーナーさんへの感謝の気持ちもあり、トレーナーが快適に働ける環境づくりには力を入れています。トレーナーがいきいきと働いていなければ、質の良いサービスも絶対に提供できませんから。
店舗につきトレーナーは1人としていて、お休みは自分で自由に調整してもらいます。売上が良ければインセンティブも発生しますし、将来的に店舗を買い取り、FCオーナーとして独立することも可能です。家庭をもってもトレーナーが金銭面に不安を抱かずに働き続けることができて、子どもの学校行事にも参加できるようにしたいと考えてこのような運用にしました。
—— トレーナーにとって非常に自由度が高い運用ですね。集客施策も個々のトレーナーが考えるのですか。
トレーナーには指導に集中してもらいたいので、ホームページの制作や集客などは本部の僕が担当しています。現場にお願いしているのはGoogleビジネスプロフィールへの投稿を小まめに実施することや、口コミを集めていただくことです。
—— 集客できるHPを制作するために意識されたことはありますか
ファーストビューで興味を引くことがとても大切なので、訴求メッセージや訴求する順番は意識しました。例えば、トレーニングの継続に失敗した方が見て「私のことだ」と感じていただけるような、主な失敗要因を3パターン用意しています。
—— 逆に、訴求において意識してやらないようにしていることはありますか。
分割払いや一定条件下で入会した場合の安い価格をHPに載せていたり、料金体系を複雑にして、詳しく話を聞いてみたら「想像より高かった」というジムが多かったということを実際にご入会されるお客さまから聞きます。美容系のサービスでそのような体験をした女性も多く、ネガティブな印象につながりやすいです。プリッツジムでは料金体系が3種類とシンプルかつ明快なので、体験も入会を前提に「雰囲気だけ確認しにきました」という方が多いです。実際、体験からの入会率も約90%と高い数値を維持しています。
3. ニーズに応えてさらなる展開に意欲、店舗数で売上アップを図る
—— 1店舗につき2人体制など、トレーナーを増やそうと考えたこともありますか。
トレーナーを増やしたら、会費を維持することが難しくなります。トレーナーが他店舗と兼務する形も考えましたが、1地域に1店舗しか出せないケースもありますし、兼務にするとシフト調整が必要になり、お休みを取りたい時に取りづらくなってしまいます。そこは避けたいと思いました。
—— 今後の目標について教えてください。
ありがたいことに、複数の店舗で入会ストップとなりそうなほど反響をいただいています。トレーナーも働きやすいと喜んでくれているので、もっと店舗を増やしていきたいです。
これは会社全体での売上を高めるためでもあります。トレーナーに昨対比で売上アップを求め続けてもいずれ限界は訪れますし、何より働きにくいと思うんです。トレーナーの負担を増やして1店舗あたりの売上を高めるよりも、1店舗あたりはほどほどに、店舗数で売上を高めていきたいと考えています。
—— 最後に、これからジムを運営したいと考えている方に向けてアドバイスをお願いします。
初期費用に数百万円をかけたりするのではなく、レンタルジムを利用するなどスモールスタートをお勧めします。数値に対する苦手意識をもつ方もいるかもしれませんが、問い合わせ数、接客数、入会数と継続率など、健全な運用のために最低限チェックすべき数値は追うことも重要です。