店舗コンセプトや競合の分析、KPIの設定などビジネスプラン(事業計画書)の策定は、開業準備の最初のステップです。本記事では、ビジネスプランの必要性や作り方、注意すべきポイントを解説します。あわせてフィットネス事業の開業コンサルティング会社である株式会社ミヤウェルネスの宮下氏と、パーソナルジムを運営する株式会社PCPの吉田氏が実践している「経営成功のための秘訣」も紹介します。フィットネスクラブ、スポーツジムなどの開業を検討されている方や経営状況の見直しを考えている方はぜひ参考にしてください。
INDEX
1. ビジネスプランとは
ビジネスプランは、会社としてやるべきことや目標、手段などを時系列にまとめた計画書のことです。事業を展開・開業するための道しるべや検証、経営計画を立てるために、「過去:これまで何をやってきたのか」「現在:何に取り組んでいるのか」「未来:これから何をするのか」の時間経過に沿って計画をまとめていきます。ビジネスプランを策定せずとも起業はできますが、資金不足や人材不足、市場参入タイミングの選択ミスなど、のちに事業失敗を招く要因になります。ビジネスプランの策定は、脳内に描いている夢や目標を実現するための重要なステップの一つです。
「事業計画書」とも似ていますが、銀行や取引先など対外的な信用を獲得する手段としても用いられる事業計画書とビジネスプランでは、記載内容に若干の違いがあります。競合や市場動向などを詳しく分析して事業コンセプトをブラッシュアップしていくものがビジネスプラン、さらに資金や売上、補助金申請額などの詳しい数字や日時まで記載したものを事業計画書と考えるとわかりやすいでしょう。
1-1. ビジネスプランを策定するタイミング
市場や消費者の動向は日々変化しているため、ビジネスプラン策定に時間をかけ過ぎると分析した内容が「過去のもの」になってしまいます。つまり、ビジネスプランの策定は内容だけでなくタイミングも重要になるのです。事業の規模感によっても異なりますが、大まかな目安として「ビジネスプラン策定から準備、そして開業までに約1年間を要する」と考えておきましょう。
もちろん策定の初期段階からすべての課題を洗い出すのはほぼ不可能ですし、途中で想定していたプランの一部が頓挫してしまう可能性もあります。定期的にビジネスプランと進捗状況に乖離が生じていないかを確認し、整合性を取りながら都度修正していきましょう。
1-2. 開業後の経営状況の見直しにも活用できる
ビジネスプランは、開業後の経営状況の見直しや長期的計画書の策定にも活用できます。「経営計画書(中長期的な事業計画をまとめたもの)」や「経営改善計画書(スケジュールの見直しや事業再生の計画をまとめたもの)」、「株式上場企画書」、「銀行借入を申し込む際の添付資料」など、さまざまな書面のベースになっていくものです。
2.ビジネスプランの作り方
事業コンセプトをざっくりと決めたら、早速ビジネスプランを策定していきましょう。いきなり事業のプランニングに入るのではなく、まずは事業全体の枠組みや目標を決めた上で、競合企業やエリアを分析していきます。自社の強みを明確にすることで、戦略的な事業計画のヒントを得られます。
2-1. どのような店舗にしたいか
ジムをはじめとする店舗経営型の事業を始める場合は、コンセプトシートを使って「5W2H」を書き出してみましょう。「5W2H」とは店舗の目的(Why)や場所(Where)、何を提供するか(What)、価格はどの程度になるか(How much)などの7項目を埋めながら店舗イメージを言語化していく考え方のことです。
シートを埋めていくうちに「地域に貢献したい」「利益を重視したい」「いずれは多店舗展開したい」といった自身の考えも明確になり、「〇〇をやりたい」という漠然とした夢が店舗コンセプトとしてブラッシュアップされていきます。物件を見つけてから店舗コンセプトを決めるパターンもありますが、基本的には店舗コンセプトを先に決めた方がスムーズに進んでいくでしょう。
店舗コンセプトの決め方については、以下の記事で詳しく解説されています。ぜひあわせてご覧ください。
あわせて読みたい:「店舗コンセプト」の決め方とは?プロ&経験者に学ぶ開業のための作業ステップ
2-2. 目標を設定する
次に、売上や会員数、受注率などの目標値、いわゆる「KGI(重要目標達成指標)」や「KPI(重要業績評価指数)」を設定していきましょう。設定すべき項目は、業種や事業内容、規模などによって異なります。まずは、売上や会員数といった大きな目標を決めた上で、必要となるプロセスを整理しながらツリー形式で派生させると設定しやすいでしょう。
2-3. 競合・エリア分析
競合となる企業や出店エリアの人口、周辺環境などの分析も事業成功の大きな鍵になります。内部環境のStrength(強み)とWeakness(弱み)、外部環境のOpportunity(機会)とThreat(脅威)の4マスを埋める分析法、「SWOT(スウォット)分析」を活用してご自身の事業プランの強みや弱み、優位性、障壁となる要素などを明らかにしていきましょう。分析のポイントは、客観的かつ正確なデータで裏付けを取ることです。強みを伸ばし、弱点を修正・補強することで市場での価値を高めていきましょう。
2-4. プランを策定する
店舗コンセプトや目標値、競合分析などが終わればいよいよプランを策定していきましょう。会員数や平均顧客単価、売上、販管費(販売費及び一般管理費)の予測、他社との差別化に必要な要素などを出しながら、収益化のために何が必要になるのかを考えていきます。
金融機関や外部パートナーなど、ビジネスプランを対外的に発信する際には、次の6項目を記載するとよいでしょう。もちろん一度に全ての項目を埋める必要はありません。3〜6ヶ月かけて情報収集や分析、プラン策定を行ったのち、具体的な物件探しや契約、マシンの注文、開業準備へと進みましょう。
- ①事業のタイトル、テーマ、自分(提案者)の名前
- ②事業の概要(動機や目的など)
- ③ビジネスモデル(どのような店舗にするか、お金の流れなど)
- ④想定スケジュール
- ⑤売上目標や収支計画
- ⑥組織体制、経営者に関する情報
3. 外部パートナーを活用するメリットとは
ビジネスプラン策定にあたっては、経営者(提案者)自身が策定するパターンと、ノウハウの提供や開業プロデュース、商圏分析などを行うコンサルタント会社や調査会社に外部委託するパターンの2種類があります。開業前から外部パートナーとの協力体制をつくっておくと、「開店後の計画を立てやすい」「手厚いアフターフォローを受けられる」といった多数のメリットが期待できます。外部パートナーを活用するメリットを詳しく見ていきましょう。
3-1. ビジネスプランの検証
コンサルティング会社などを活用した場合、小まめにビジネスプランの検証や見直しを行えます。商圏分析や店舗立地の調査、内部分析などの結果をもとに、専門の知識を持ったスタッフが課題を洗い出してくれるため、より質の高い行動計画を立てられます。自社に年間計画や予算の策定、マネジメントなどを担う専門部署がない場合には特に心強い味方になるでしょう。
3-2. 数値をデータ化できる
開業後にアフターフォローや運営サポートを受けられるのも、外部パートナーを活用するメリットです。フィットネスクラブやスポーツジムなどの店舗運営を行う場合、売上や会員数、在庫、予約状況などを管理する必要がありますが、自社ですべてを行おうとすると事務負担が大きくなります。また、実際のデータを経営に反映させるのも簡単ではありません。管理システムやツールなどの外部パートナーのサービスを活用することで、事務作業の効率化やスタッフのエンゲージメント向上、データ経営による収益アップなどが期待できるでしょう。
3-3. 課題解決のためのアイデア
外部パートナーの協力を得ることで、開業後しばらく経った後に想定される「退会阻止」や「広告運用」にもスムーズに対応しやすくなります。常に変化する市場や消費者ニーズをキャッチでき、その都度新たなアイデアで戦略的な施策を立てられるでしょう。
一口に店舗運営といっても、エリアや規模、店舗数などによってサポート内容は大きく異なります。外部パートナーを選ぶ際には、ビジネスプランに近い実績を持っているかを十分チェックしてください。開業からその後の運営まで、会社と外部パートナーは二人三脚で歩んでいきます。実績や知識、そして担当者との相性を見極めながら選んでくださいね。
4. 【事例紹介】株式会社ミヤウェルネス
2020年に設立された株式会社ミヤウェルネスは、フィットネスジムの開業支援を行うコンサルティング会社です。フィットネス経営のノウハウに長け、数多くの新店舗の開業に携わってきたプロ集団が戦略的なプロデュースを行います。今回は、代表を務める宮下 祐季氏がビジネスプラン作成のポイントから初心者オーナーが陥りやすいミスまでを解説。店舗エリアに適した月会費の算出方法や設定すべきKPI、混雑予想の重要性など、開業時に役立つ実用的なノウハウをお伝えします。
PROFILE
宮下 祐季株式会社ミヤウェルネス 代表取締役
JOYFIT24の創業期にアルバイトからフィットネス業界へ。店長、クラブマネージャーのキャリアを通して後にFC本部SVとして加盟企業7社のFCを支援。当時の最年少キャリアでステップアップ。東証一部上場ツカダグローバルホールディング子会社のフィットネス新規事業開発を担当。株式会社フィットネクサス 法人設立に従事。fitnexus24の企画・開発・運営を統括。60店舗以上の店舗運営、新店開発、FC支援を経験。
4-1. 環境調査のポイント
環境分析のポイントを解説します。環境分析は、店舗の立ち位置や優位性を知り、競合との差別化を図る上でのヒントになります。
人口、競合、駅の乗降客数、地域の世帯年収から月会費を出す
店舗の周辺環境を分析するために、まずは店舗エリア周辺の人口や競合となるフィットネス系の店舗が何店舗あるのかを見ていきましょう。出店エリアにあった月会費を算出したいときには、駅の乗降客数や周辺エリアの世帯年収なども役立ちます。個人で調査・分析する場合は、総務省統計局が提供している「jSTAT MAP」という商圏分析ツールや、各都道府県が公表している住民基本台帳の人口統計も活用してみてください。一般的に、日本のフィットネス参加率は約3%といわれているので、そこから大まかな地域別のフィットネス人口を算出できます。
自店舗(自社)の業態と似た店舗(企業)を分析する
同じフィットネス業界といえども、若い世代がメインターゲットとなる24時間ジムとシニア世代向けのフィットネスクラブやスポーツジムは比較対象にはなりません。なるべく自店舗と類似性が高い競合他社を選定した方が、差別化を図るヒントを得やすいでしょう。
また、競合分析の際にレッスン費用を比較するケースが多いですが、同じ金額であってもレッスン時間や内容が変われば顧客の選択に大きな影響を及ぼします。サービス内容やスタッフの質なども分析の一要素としましょう。
4-2. 目標設定のポイント(KPIの設定方法)
次に、目標設定のポイントの解説です。正しいKPIを設定できると事業の進捗を把握しやすくなり、目標達成までに必要なプロセスを可視化できるようになります。
月会費のプラン別に予測を立てる
大きな目標として「売上」を設定したうえで、月会費別にプランが数種類ある場合にはプラン別に会員数の予測を出しましょう。また、その数字をもとに、合計会員数や平均客単価を出してみましょう。ここで平均客単価を出しておくと、「売上コスト÷平均客単価」で損益分岐点まで算出できます。
来館利用率を計算して混雑予想を立てる
店舗の混雑状況は、顧客満足度や売上にも影響するポイントです。休日の昼間や平日の仕事終わりから夜にかけてなど、人が集まりやすい時間帯に何人以上来館するとキャパオーバーになるのか、計算して把握しておきましょう(=来館利用率)。「1日にどのくらいの人が来館するのか」「1日のうちで瞬間的に混み合う時間帯はいつで、何名訪れるのか」を明確にすることで、混雑予想を立てやすくなります。
24時間ジムやフィットネスクラブ、スポーツジムなど、予約不要で利用できる施設の場合は、自動OS機能(自動で受付・入退館の管理ができる機能)があるシステムやツールを導入して、入退館記録を自動化するのも一案です。利用者の入館・退館履歴が管理サイトに反映され、来場者数の集計が容易になります。また、利用者向けに混雑状況を表示させることもできるため、利便性向上による来館機会の増加や施設の混雑分散などにも貢献するでしょう。
4-3. 課題の抽出と解決策
続いて、経営課題の抽出とそれに対するアクションプランの設定について解説します。初心者オーナーが陥りやすい、オープン後の見落としとは何でしょうか。
集客の行動計画を見直す
オープンから半年前後で生じやすい課題としては、「集客不足」と「退会者の増加」が挙げられます。集客の行動計画を見直し、前者の場合は入会数が取れているときの獲得単価をかけていきましょう。予算の関係で広告費を止める場合には、広告宣伝の代わりに紹介キャンペーンを打つなどして、リカバリーとして他の集客施策を立ててみてください。一般的に入会から半年が経過すると、退会者が増えやすいとされています。多くの人が同じタイミングで退会を希望すると考え、その時期に合わせて退会抑止策を立てておくと良いでしょう。
オープン後の行動計画を考えておく
ビジネスプラン策定からオープンまでの計画は考えられていても、「オープン後の運営や行動計画についてはノータッチ」というオーナーも意外と多いようです。集客や売上の管理、スタッフへの指導など、オープン後もさまざまなタスクが発生し、忙しい毎日が続くでしょう。そのため、開業前の段階から、業務オペレーションや新たな集客施策、広告運用の有無など、細かな部分まで決めておいてください。「実際に事業計画を現場スタッフに落とし込めなかったために、会社が想定外の方向性へ進んでしまった」というケースも実際に目の当たりにしています。オープン後の行動計画を決めておくのはもちろん、現場スタッフへの周知も心がけましょう。
4-4. 計画実行(PDCAを回す上でのポイント)
最後に、計画実行のポイントについて解説します。意外なところに落とし穴があるので、スケジュール面は、特に注意が必要です。
月々の目標だけでなく「年間計画を作る」
集客目標(体験者数や契約率、会員数など)を定める場合は、月々の数字ではなく、「年間」もしくは「半年」の数字を設定しましょう。もちろん月々の目標を設定しても良いのですが、のちのちの予算不足を防ぐためにも、先々の数字も意識しておきましょう。
目標数値を考える際は、「大きな目標を達成するために、今月は何をしなければならないのか」といったようにブレイクダウンしていくのがベストです。
物件取得日やマシンの納期に注意する
開業に際して必要となる費用には、内装工事費やマシン費用、物件取得費などさまざまな項目がありますが、メーカーによってマシンの納期にかなりの幅があります。仮にオープン時期が決まっていても、当日までにマシンが届かなかった場合は営業できないため、「家賃だけが発生する赤字期間」が生まれてしまいます。支払い時期もばらけてしまうため、予算獲得や予算の組み方が難しくなってしまうケースもあるでしょう。取り扱いたいマシンや希望する物件がある場合には、できるだけ早いタイミングで納期や入居時期を確認すると安心です。
5. 【事例紹介】株式会社PCP
2009年に設立された株式会社PCPは、スポーツ医科学的に根拠ある理論とパーソナルトレーニングの指導によって、最短で最大の効果を上げるパーソナルトレーニングジム(パーソナルジム)の運営を中心に、トレーナーの養成スクールや、企業や団体と協業するなど、さまざまな事業を展開しています。パーソナルジムでは、高次元のスキルを持つ専門スタッフが一人ひとりの身体の状態を見極め、アスリートには「勝てる体」を、ビジネスアスリートには「日本を元気にできるビジネスパーソン」へ、そしてトレーナーを目指す人には「トレーナー×ビジネスマナー×ビジネススキルを兼ね備えるノウハウ」を提供しています。今回は、代表取締役の吉田 輝幸氏にビジネスプラン策定のポイントや成功のコツを聞きました。
PROFILE
吉田 輝幸株式会社PCP 代表取締役
有限責任監査法人トーマツで、ベンチャー企業中心に会計監査、上場支援業務を提供。コンサル会社を経て、税理士法人エナリに入所。入所後、新規創業・起業したばかりのベンチャー企業向けに会計税務、資金繰り、事業計画策定サービスの提供を開始。現在では年間100件を超える創業起業に関する相談を受けている。
5-1. ビジネスプラン策定のポイント
まずは、当社PCPがビジネスプラン策定を行った際のポイントについて、紹介します。
マッキンゼーの「7S」との整合性を確認する
新事業のビジネスプランを立てるときや経営状況を見直す際の柱にしているのが、MBA取得時に学んだマッキンゼー社の「7S」です。「戦略(Strategy)、組織(Structure)、システム(System)」と「価値観(Shared Value)、スキル(Skill)、人材(Staff)、スタイル(Style)」の7項目から組織を分析するフレームワークで、採用フローやトレーナー育成などにも活用しています。相互関係を見ながら整合性を取っていき、相違している部分があればその都度微調整する流れです。7Sのフレームワークを意識するようになってから、会社がより良い方向に進んでいると感じています。
5-2. 環境分析から計画実行まで
続いて、環境分析から計画実行までの流れを具体的に解説します。
顧客の真のニーズを深掘りする
現在、株式会社PCPではほぼ退会者がいない状態(1%台)を維持しています。一般的なパーソナルジムと比較して退会率が低い理由は、顧客の困りごとや悩み、希望など「真のニーズ」を取りこぼさないからだといえます。
例えば、「痩せたい」と希望するお客さまの真のニーズが「息子の運動会がある9月までに、親子リレーで速く走りたい」であった場合、「痩せたいんですね。○月までに○kg落としましょう」では不十分です。研修を通して「今ある情報を疑う」というクリティカルシンキングをスタッフ全員が養うことで、お客さま自身も気づいていないニーズを満たすことができています。これこそが100%を超える120%の仕事をして、顧客満足度を高める秘訣です。
<顧客の真のニーズを満たす、クリティカルシンキングの例>
秋までに5kg痩せたい
↓
何か理由がある?⇨運動会があるから痩せたい
↓
運動会で何かある?⇨息子と親子リレーに出る
↓
どんな風に走りたい?⇨かっこよく走りたい
↓
何メートル走る?⇨200m走る
↓
体重を落とすだけでは満足いくように走れない。
200mを軽やかに走るためには〇〇と〇〇を重点的に鍛える必要がある。
従業員の精度を高める
株式会社PCP設立時に人材募集や育成にそこまで力を入れていなかったからこそ、オープン後に「だれを船に乗せるのか」の重要性を痛感しました。現在は、高いレベルのスキルを持った人材を確保するために、自ら主体となって採用やスタッフ育成に取り組んでいます。採用段階から7Sとの整合性を確認し、トレーニング指導のスキルはもちろん、コミュニケーション力や環境変化にも柔軟に対応できる人間力、ビジネスパーソンに求められるマナーなどを備えた人材を確保・育成しています。スタッフと目線を合わせて進んでいけるよう、会社が目指す方向や展望について都度共有することも大切ですね。
KPIの項目はスタッフと経営サイドで分ける
KPI項目はスタッフサイドと経営(本部)サイドで分離させていて、スタッフは「売上」と「入会率」、経営サイドは「売上」「退会率」「体験者数」の数字を追っています。実際の数字を一つお伝えすると、入会率は目標100%に対して現在70〜80%となっています。KPI項目を分離させている理由としては、いわゆる「職人肌」であるトレーニングスタッフを気負わせないためです。市場動向が変化しやすい業界だからこそ、あえてKPI達成までの期間は細かく設定しないようにしています。
外部環境の変化をいち早くキャッチし、業界を俯瞰して分析する
フィットネス事業に限ったことではありませんが、事業を取り巻く外部環境は刻一刻と変化するものです。ベンチマークしている企業や市場動向について抜け漏れがないよう注意深くチェックし、業界の勝ちパターンがどう確立されているのか、そして、どう変化しているのかを確認しています。加えて、業界を俯瞰し、客観的に分析する能力も求められるでしょう。
個人的には、フィットネス事業はAIでは代替できない「人と人とのつながり」によって成り立つものと考えています。健康志向が高まる中で需要もまだまだ伸びると予想できる反面、成熟された市場であるがゆえに、新規参入した場合のハードルはどうしても高くなりがちです。事業化を目指す場合は、参入する業界のフェーズを分析した上で、自社の立ち位置や優位性を見出すことが大切です。
6. まとめ
フィットネスクラブやスポーツジムの開業コンサルティング会社やパーソナルジムを運営する企業の実例を交えながら、ビジネスプランの策定や成功のコツを紹介しました。ビジネスプランの策定は、思い描いた夢を事業化するための最初の一歩です。自社の強みを磨き、競合との差別化を図る上でも重要なポイントになります。店舗コンセプト策定や競合分析、KPI設定など、ステップを踏みながらビジネスモデルをブラッシュアップしていきましょう。本記事が少しでも参考になっていれば幸いです。