「バク転で、あなたの人生を豊かに」をコンセプトに、バク転パーソナル教室を運営する株式会社bakuten。子どもの習い事や大人の趣味としても人気を集め、できた喜びが自信につながる成功体験を提供しています。現在は、日本各地で30店舗以上を展開。男子新体操で競技者として、また指導者としても日本一を達成した経歴を活かし、同社を立ち上げた創業者の谷 俊太朗氏に、事業の方針やこれからの展開、バク転を通じて伝えたい想いについてお話を伺いました。
INDEX
PROFILE
谷 俊太朗 株式会社bakuten 代表取締役
1992年、愛知県生まれ。小学3年生から体操を始め、4年生でバク転をマスター。新体操の名門・青森山田高校に入学し、男子新体操で日本一に。青森大学では7つの全国大会で優勝を経験。卒業後、青森山田高校でコーチを務め、指導歴1年でチームを日本一に導く。その後、パーソナルジムの経営を経て、2021年に株式会社bakutenを起業し、「バク転パーソナル教室」をオープンする。
お客さまからの要望に応える形でスタートしたバク転パーソナル教室
—— 谷さんのこれまでの経歴を教えてください。
私は男子新体操の競技で青森山田高校、青森大学で日本一を複数回経験しました。卒業後は青森山田高校で教員として男子新体操を指導し、ここでもインターハイ優勝を経験しています。それで指導力にも自信がついたのですが、ここで一旦体操から離れ、地元の愛知に戻ることにしました。地元でサラリーマンを3年ほど経験した後、2019年にフランチャイズ(以下、FC)のパーソナルジムに加盟して、マンションの一室でパーソナルジムを運営しながら、並行してバク転パーソナル教室を始めました。
—— 「バク転パーソナル教室」という特徴のある業態を選ばれたのはなぜでしょうか。
ホームページで「新体操日本一」という経歴を紹介していたら、パーソナルジムに通うお客さまから「うちの子どもにバク転を教えてほしい」という依頼が来るようになったんです。それで教えているうちに、「バク転って個人指導をしたらこんなにすぐ上達するものなのか」と気づいて。これはサービスになると考えてホームページを作り、Instagramで広告を出したら予想以上の反響がありました。すぐに集客もできたので、パーソナルジムと並行しながら、バク転パーソナル教室も運営することにしたんです。
—— ホームページ制作やMeta広告※もご自身で対応したのですか。
パーソナルジムのFCに加盟した際に、FC本部からSEOや広告の出し方を学びました。さらに言うと、スケールする際にFC本部がどのようなことをやるべきかなども、そこで学びましたね。教わったことをそのままシンプルにやっていくうちに、どんどん大きくなったという感じです。
※Meta広告:Meta社(旧Facebook)が運営する、FacebookやInstagram、Messenger、Threadsなどのプラットフォームに表示される広告
—— 競合も少ないと思うので、「バク転をしたい」と思った方が検索し、SEOで貴社のホームページにたどりつくのですね。
その通りです。「バク転をしたい」という明確な意志を持った方が体験に来るので、入会のご案内もしやすく、全店舗で入会率は80%を超えています。

お客さまの悩みを解決し、成功体験を。バク転が社会問題を解決していく
—— 事業を展開していくうえで、どのような点を重視されていますか。
もともと、世の中の問題解決をして、社会に貢献したいという想いが強いんです。だから、このバク転パーソナル教室でも、お客さまのお悩みを解決することが重要だと考えています。最初にじっくりカウンセリングを行い、なぜその方がバク転をしたいのか、なぜバク転が必要なのかを深掘りしていきます。理由がきちんとわからないと、レッスン内容を構築できません。だから入口の部分を大切にしています。
—— しっかりとしたカウンセリングも80%という入会率につながっているんですね。
もっと言うと、悩みを解決して、成功体験を積むということが重要だと思っています。私自身、小学校4年生の時にバク転ができたことで自信が生まれ、新体操競技で日本一になることができた。そうやって1つの目標を達成した経験が自信につながり、さらに大きな目標へ挑めるようになります。バク転は、成功体験を得て人生をよりよい方向に導いていくきっかけなんです。だからこそ、「バク転で、あなたの人生を豊かに」というコンセプトを掲げています。バク転ができる人材が増える=自信を持った人材が増えることで、社会がよりよくなり、社会問題の解決につながっていくと考えています。
—— その理念を叶えるには、講師陣の質も重要だと思います。FCで店舗展開をされていますが、講師の方たちにはどのような研修を行っているのでしょうか。
指導の様子を撮影し、指導品質を本部でチェックしています。さらに、講師たちと「コミュニケーションのシェア会」を定期的に行っています。この会では、「こういう目的をもったこういうお客さまがいらっしゃるので、こういう方針で指導して、今はこういう状況です」と、それぞれの講師が発表します。ここで重要なことは、アドバイスは禁止・承認がベースということです。講師同士が尊敬し合い、リスペクトすることが重要です。
—— 講師一人ひとりが自ら発信し、それを認め合う。これも成功体験ですよね。
まさに、こういう成功体験が、指導の熱につながっていくと考えています。やはり現場が一番大事ですから。シェア会では悩みが相談されることもあります。その場合も皆でディスカッションし、問題を解決できる方法を考えます。このシェア会は、経営者同士のコミュニケーションの取り方からヒントを得て発案しました。

コロナ禍の不遇期を次の展開の準備期間に。下がった後は、必ず上がる
—— お話をお聞きしていると、とても順調に事業が発展している印象を受けますが、創業後、もっとも大変だったことはなんでしょうか。
やはりコロナ禍ですね。株式会社bakutenの創業前にはなりますが、サラリーマンを辞め、2019年にパーソナルジムを起業した後だったんです。緊急事態宣言が出たので、お客さまもレッスンに来られません。当時は生活のために、4つのアルバイトを掛け持ちしていました。
—— とても苦労されたのですね。
その時は「自分は何をやっているんだろう」と思いましたね。でも、これも学びだと思い直し、動き出していた「バク転パーソナル教室」の企画を細部まで練り込むことに集中しました。ある意味、コロナ禍で時間ができたおかげで、事業構想に存分に時間をかけることができました。
—— 状況に焦ることなく、学びだと考えて次の展開の準備を進めたのですね。
これも過去の成功体験のおかげだと思うのですが、「今こんな状況にいる自分が許せない、だから絶対に成功する」という強い意志があったんです。新体操という競技で何度も打ちのめされる経験をしながらも、最後に優勝、日本一を勝ち取ってきたから「必ず上に這い上がれる」と自分を信じて行動できました。「今の体験は、這い上がった後にいいネタになるな」なんて考えていましたね。
—— そしてコロナが収束し、今の結果があるわけですね。すばらしいと思います。今後は、どのような展開を考えていらっしゃるのでしょうか。
今は、チアダンスやパルクールなどの新たな分野への展開を考えています。体操業界とも提携していきたいですね。これから、私と同じ世代の若い監督が体操界の中心になって来るので、一緒に新しい展開を考えていけたらいいですね。
私が抱いている最終的な目標はすべての人の悩みを解決し、自分の周りの人が幸せになることです。そのためには、自分のリスクを負うことも厭いませんし、自分のもっているものはすべて使うし、得たものはすべて還元したいと思っています。そのためにも、買収なども行って、事業をもっと大きくしていきたいです。