顧客エンゲージメントが高まることで、店舗の利用頻度や商品の購買頻度が高まり、結果的に収益によい影響があります。そのため、多くの企業が、顧客エンゲージメントを高める施策に力を入れています。顧客エンゲージメントを適切に高めるためには、市場感や顧客のニーズなどを分析する必要があります。
この記事では、顧客エンゲージメントの定義から高める方法、成功事例まで紹介します。
INDEX
1. 顧客エンゲージメントとは?
顧客エンゲージメントとは、企業とお客様の信頼関係のことを指します。エンゲージメントは、直訳すると「関わり」や「熱意」という意味です。
いつも同じ商品やブランド、サービスを繰り返し購入してくれるお客さまは、その商品やサービスに対するエンゲージメントが非常に高い、と言えます。
ちなみに、SNSの評価指標の中に、「エンゲージメント数」や「エンゲージメント率」がありますが、これらのエンゲージメントは、「いいね」や「シェア」などのユーザーのアクティブな行動を示す言葉です。
1-1. 顧客満足度との違い
顧客満足度とは、利用した商品やサービスに対する評価のことです。商品やサービスを利用して満足したとしても、それが「信頼」や「愛着」に繋がるかというと、そうではありません。顧客満足度を向上させるだけでは、継続して売上に貢献してくれるエンゲージメントの高いリピーターになってもらえる可能性は低いです。
1-2. 顧客ロイヤリティとの違い
顧客ロイヤリティとは、アンケート調査などを通じて、お客さまの感情を想定するための指標です。顧客エンゲージメントとの違いは、調査プロセスに起因します。顧客ロイヤリティは、NPS®(ネットプロモータースコア)という指標を使うのに対し、顧客エンゲージメントは顧客が実際に起こしたアクションに基づいて測定されるのです。NPS®については、5章で詳しく解説します。
1-3. 顧客エンゲージメントが重要な理由
従来のマーケティング手法は、「競合他社と比べて、よりよい商品やサービスを安く提供すること」が主でした。現在では、似たような商品やサービスが増えたことで差別化が難しく、消費者からすると「どの商品・サービスを使っても同じ」と感じられ、価格競争が激しくなっています。
また、インターネットの普及により、お客さまの価値観や購買行動も変化しているため、従来のマーケティング手法では、商品を売ることが難しくなっています。
そこで、「顧客エンゲージメントを向上させ、収益を上げること」が重要になってきています。以下、くわしく解説します。
1-4. サービスの差別化が難しくなった
あらゆるサービスで、独自性が薄くなり差別化が難しくなったため、よい商品を販売するだけでは競合他社に勝てなくなっています。
競争に勝つためには、ブランドや商品、サービスに魅力を感じてくれるお客さまを大切にし、期待に応え続けることで、お客さまから選んでもらえるようにすることが重要です。
1-5. 顧客の情報リテラシーが高まった
インターネットが普及した現代では、お客さまは自ら欲しい情報を取りにいき、比較検討してから商品を購入するようになりました。多くの商品・サービスを比較検討できるようになった現在では、価格や質のみで選別するのが難しいため、新しい指標として販売元への「信頼感」や「安心感」の醸成が重要になります。
1-6. 継続的なサービスの利用が不可能なため
現在では類似商品やサービスがあふれているため、基本的にどの商品・サービスを選択しても大きな違いはありません。そのため、一度使ってみてそこまで愛着が持てなければ、別の類似商品・サービスに切り替えることも珍しくありません。自店舗の商品・サービスを継続利用してもらうためには、「信頼感」や「愛着」の醸成が欠かせません。
2. 顧客エンゲージメントを高めるメリット
顧客エンゲージメントを高めるメリットは、以下の4つです。
- リピート率の向上に繋がる
- 情報拡散によるブランディングに繋がる
- 自店舗のサービスの改善点が見えてくる
- お客さまとの信頼関係が深まることで、市場競争力が上がる
4つのメリットについて、詳しく解説します。
2-1. リピート率の向上に繋がる
エンゲージメントが高いお客さまは、繰り返し商品・サービスを購入してくれるため、安定した収益が期待できます。月額制サービスや会員制の事業モデルにおいては、解約数(率)が減少するのも大きなメリットです。
2-2. 情報拡散によるブランディングに繋がる
エンゲージメントが高いお客さまは、店舗にとって、これ以上ない広告塔であり、強力な販促パートナーです。口コミによる拡散を積極的に行ってくれるため、周囲の顧客エンゲージメントも高まります。同じ消費者の立場からの好意的なレビューは、店舗からの広告よりも強い宣伝効果があります。
また、エンゲージメントが高いお客さまは、的を射たマイナスの意見(改善点を指摘する意見)も提供してくれます。多くの消費者に商品が届く前に改善できるようになるため、店舗としてもエンゲージメントが高いお客さまからフィードバックがもらえるのは望ましい状態です。
2-3. 自店舗のサービスの改善点が見えてくる
エンゲージメントが高いお客さまの貴重なフィードバックを積極的に取り入れていくことで、顧客ニーズにあった商品・サービスを提供できるようになります。店舗の成長を後押ししてくれるでしょう。
2-4. お客さまとの信頼関係が深まることで、市場競争力が上がる
エンゲージメントの高いお客さまを獲得できると、競合に同じような商品・サービスであったとしても、自店舗の商品・サービスが選ばれやすくなります。「あの商品といえば、あの企業だよね」というように、商品・サービス名からすぐに店舗を連想してもらえるようになれば、「顧客エンゲージメントが構築されている」と言えるでしょう。顧客エンゲージメントが獲得できていれば、社会情勢の影響をあまり受けずに、長期的に安定した売上が狙えます。

3. 顧客エンゲージメントを高める方法
下記の4つの行動をすることにより、顧客エンゲージメントを高めることが可能です。
- エンゲージメントの目標を設定する
- カスタマージャーニーマップを作成し現状を把握する
- データの分析をし施策を提案する
- KPIの設定をして施策を実行する
3-1. エンゲージメントの目標を設定する
まずは、「お客さまとどのような関係を構築したいか」といった長期的に実現したい目標を設定してください。目標を設定する上で、「どういった顧客体験を提供したいか」といったCXやUXに関する議論が必要不可欠です。
3-2. カスタマージャーニーマップを作成し現状を把握する
カスタマージャーニーマップによって、顧客体験の流れとお客さまが抱く感情の可視化をすることで、顧客目線でのアプローチができるようになります。
カスタマージャーニーとは、お客さまが自店舗の商品・サービスを認知してから実際に購入する間に体験することを、旅に例えた考え方です。
3-3. データの分析をし施策を提案する
カスタマージャーニーマップによって、各プロセスの課題が抽出できたら、その課題達成に必要となる解決策を検討していきます。
解決策のアイデアは、実用性を考慮するだけでなく、「お客さまから見て、どれくらい課題を解決できそうか(課題解決に期待が持てそうか)」「その解決策は自店舗らしいやり方になっているか」なども考慮して、検討することが重要です。
3-4. KPIの設定をして施策を実行する
施策を実施する際は、定量的かつ測定可能なKPI(重要業績評価指標)を設定し、課題の解決度合いを調査していく必要があります。
例えば、動画配信の月額配信サービスにおいて、カスタマージャーニーマップで「韓国ドラマの需要が国内で伸びているから、売上を上げるためには韓国ドラマの配信本数を増やせばいいのでは」という仮説を立てたとします。仮説を立てたら、次に「売上を1.2倍にする目標を達成するためには、韓国ドラマの配信本数を毎月5本増やす」といったように具体的な解決策を立案します。
この施策は、顧客ニーズに基づいているので、「韓国ドラマの配信本数を増やす」ことで結果的に顧客エンゲージメントを高めることができます。
4. 顧客エンゲージメントを高めるためのポイント
顧客エンゲージメントをさらに高めるためには、以下2つのポイントと上記で紹介した4つの方法を組み合わせて行うと有効です。
- CX(顧客体験)の向上を目指す
- システムを導入することで、顧客情報・顧客行動の一元管理と分析を行う
4-1. CX(顧客体験)の向上を目指す
CXは、カスタマーエクスペリエンスの略です。商品・サービスの合理的な価値だけでなく、感情的な訴求を重視する考え方です。
商品・サービスは、一度購入したら終わりではありません。お客さま側からすると、そういう場合もあるかもしれませんが、提供側からすると、一度購入してくれたお客さまには、リピーターになってもらいたいと考えるのが一般的です。また、可能であれば購入して満足した口コミを拡散してもらうことで、新規顧客の開拓につなげるという波及効果への期待も高まります。
そこで、近年注目を集めているのがCXです。生活スタイルや価値観は、時代とともに多様化しています。そのため、これまでのように商品・サービスを提供する側の価値観を一方的に押し付けるだけでは、お客さまに購入したいと思ってもらえません。
また、スマートフォンの普及により、SNSをはじめ、インターネット上には多様なサービスが増えているため、お客さまとの接点も多様化しています。
リアル店舗かオンラインかに関わらず、「お客さまが商品・サービスの購入や利用にあたって、どのような体験をしたいか」「その体験に対して、お客さまがどのような価値を感じているのか」などの要素をデータで洗い出し、お客さま一人ひとりの体験をさらに向上させるアプローチを行うことが重要です。
4-2. システムを導入することで、顧客情報・顧客行動の一元管理と分析を行う
顧客行動の分析とは、お客さまの属性や購買履歴などを分析し、お客さまについてよく知ることを指します。従来であれば、より性能のよい商品を販売すれば、順調に売上を確保することができていました。しかし、お客さまが多様な価値観を持ったことで、顧客ニーズを捉えなければ売上が上がりづらくなったため、顧客分析に注目が集まっています。

5. 顧客エンゲージメントの調査方法
顧客エンゲージメントの状態を調査する方法は、下記の2つです。SNSはサービスごとにメインユーザーが異なるので、自店舗の商品・サービスのメインターゲットが利用しているSNSを対象にすると、効率よく調査を進められます。
5-1. SNSでの調査方法
SNSが情報を得る手段である現在では、SNSを利用してエンゲージメント率を測れます。具体的には、店舗の投稿に対し、どれくらいの反応があったかを測定します。
代表的なSNSであるInstagram、Twitter、Facebookでは、以下の計算方法でエンゲージメント率を算出できます。
5-1-1. Instagram
Instagramのエンゲージメントとしてカウントされるアクションは「いいね」「コメント」「保存」の3種類です。エンゲージメント率は以下の計算方法で求められます。エンゲージメント数は、いいねとコメント、保存の3種類の合計です。
エンゲージメント数÷インプレッションorリーチorフォロワー数
Instagramはエンゲージメント率が公式に存在していないため、分母は自ら設定しなければなりません。同じ数値を使い続けることで、エンゲージメント率の推移を把握しましょう。またInstagramでは、ビジネスプロフィールへ変更を行うと、インサイトでエンゲージメント数を確認できます。
5-1-2. Twitter
Twitterのエンゲージメントとしてカウントされるアクションは以下の5つです。
- いいね
- リツイート
- 返信
- クリック
- フォロー
エンゲージメント率は、以下の計算式を用いて算出します。エンゲージメント総数は下記の合計です。
- いいね
- リツイート
- 返信
- クリック
- フォロー
エンゲージメント総数÷インプレッション
投稿したツイート画面にある「ツイートアクティビティを表示」をクリックすることで、そのツイートのエンゲージメント数を確認できます。
5-1-3. Facebook
Facebookのエンゲージメントとしてカウントされるアクションは以下の4つです。
- いいね
- コメント
- シェア
- クリック
エンゲージメント率は、以下の計算方法を用いて算出します。なお、エンゲージメント数は下記の合計です。
- いいね
- コメント
- シェア
- クリック
エンゲージメント数÷投稿のリーチ数
エンゲージメント数は、インサイトから確認できます。
5-2. NPS®での調査方法
NPS®は、顧客ロイヤリティを測るアンケート調査です。
下記の項目を数値化できるため、顧客エンゲージメントの調査方法としても用いられています。
- 企業
- プロダクトへの愛着
- 信頼
具体的には、サービスを利用したことがあるお客さまに対して、「友人や知人にすすめる可能性は、どれくらいありますか」という質問を投げかけ、0〜10点の範囲で点数をつけてもらいます。スコアの算出方法は以下の通りです。
- 0〜6点は批判者
- 7,8点は中立者
- 9,10点は推奨者
推奨者の割合-批判者の割合=NPS®
つまり、NPS®の数値が高いほど、顧客ロイヤリティが高いというわけです。
6. 顧客エンゲージメントの成功事例
顧客エンゲージメントの向上に成功している企業はいくつかあります。
6-1. カーブス
カーブスでは「カーブスでの健康習慣を教えてください」というキャンペーンがInstagramで行われました。このキャンペーンで「#カーブス」と「#健康習慣」のタグをつけて投稿した方の中から、抽選7名様にオリジナルタンブラーがプレゼントされるという内容です。
このキャンペーンでは、ブランドの名の「#カーブス」とブランドが提供するサービスに結びつくポジティブなキーワード「#健康習慣」を組み合わせ、ブランドイメージの定着に繋げている点がポイントでした。
6-2. スターバックス
スターバックスがお客さまに提供しているのは、コーヒーだけではなく、「第3の場所(サードプレイス)としてくつろげる空間」です。スターバックが活用する顧客エンゲージメントは、お客さまの帰属意識を高めるためにお客さまに居心地のよい空間を提供する、というものです。お客さまが求めているものを徹底的に追求し、それらの情報を分析することで、店舗でのサービスに反映させています。
6-3. 日本航空(JAL)
日本航空では、顧客エンゲージメントの強化を図るために、SNSを効率的に活用しています。きっかけは2011年に、JALの公式Facebookを開設したことです。当初は現役の機長が直接投稿するなど、思い切った手法を用いて、お客さまにとって身近な企業であることをアピールしました。
現在では、公式インスタグラムも開設して、20〜30代の女性をターゲットにした情報発信も行っています。このようなSNS上でのやりとりのデータをサービスの活用にも活用することで、企業のイメージアップにつなげているのです。
7. まとめ
本記事では、顧客エンゲージメントの基礎から高める方法、成功事例について解説しました。昨今の市場動向を鑑みると、店舗の信頼や収益を向上するためには、顧客エンゲージメントを高めることは非常に重要です。
また、顧客エンゲージメントの状況を調査する方法の手段としては、SNSが主流になっているため、今まで利用したことがないという方は、本記事でご紹介した成功事例を参考に、SNSの運用もあわせて初めてみてはいかがでしょうか。