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コンセプトは「ソーシャル×ウェルネス」 LAとNYに登場した話題のソーシャルクラブ2店をレポート

2023.07.18

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コンセプトは「ソーシャル×ウェルネス」 LAとNYに登場した話題のソーシャルクラブ2店をレポート

フィットネス先進国と言われるアメリカ合衆国を中心とした海外の最新トレンドを、現地在住の日本人が取材し、毎月ご紹介します。

今月は、アメリカで現在トレンドになりつつあると言われるソーシャルウェルネスクラブの現状について、現地からのレポートをお届けします。

INDEX

1. アメリカで流行しはじめたソーシャルウェルネスクラブとは

今、アメリカで、流行の兆しを見せているといわれるのが、ウェルネスを重視したソーシャルクラブです。ソーシャルクラブとは、会員制で飲食やイベントなどを提供する施設のこと。なかでも、近年は「Remedy Place(レメディ・プレイス)」や「Gaia NoMaya(ガイア・ノマヤ)」といったウェルネスを重視した“ソーシャルウェルネスクラブ”が話題となっているようです。

ソーシャルウェルネスクラブには、ジム設備などはありません。あるのは、冷温療法などの設備やスパ、高圧酸素治療室、カイロプラクティック、ビタミン注射、ヨガや瞑想のクラスなど。フィットネスクラブとは異なり、人とのつながりやセルフケアを重視した、健康でよりよい生活を送るための会員制クラブと言えます。

まだ全国的には店舗は少なく、ニューヨークやロサンゼルスのリベラルな富裕層をターゲットに展開している模様。「レメディ・プレイス」や「ガイア・ノマヤ」のほかにも、いくつかのソーシャルウェルネスクラブがあるようです。

2. アメリカでウェルネスが重視される理由

2-1.民間保険が必要な保険システム

現在、アメリカでは、「ウェルネス」「ウェルビーイング」という概念が重要視されています。これには、アメリカの保険システムが関係しています。国民皆保険制度※のないアメリカでは、健康保険を利用するには、民間保険会社の保険に加入する必要があります。高齢者や障害者が利用できる「メディケア」、低所得者層が利用できる「メディケイド」という公的医療保険制度もありますが、対象とならない人は民間保険を利用しています。企業や団体が社員への福利厚生として団体保険に加入しているため、所属会社や所属団体が加入した民間保険を利用する人が多いのが現状です。

加入している保険によって受けられる医療の質や負担金額などが大きく違ってくるため、アメリカでは、病気にかかる前の予防医学として「ウェルネス」「ウェルビーイング」を重視しているのです。保険負担を減らすという観点からも、従業員の健康を守るために、福利厚生の一環としてフィットネスクラブの会費などを負担する企業も多いようです。

※ 病気や事故などで病院を利用する際に、医療費の負担を軽減してくれる医療保険制度。 日本では、すべての国民が公的医療保険に加入することになっているため、国民皆保険制度と呼ばれる。

2-2.カイロプラクティックなどのヘルスケアの活用

予防のための健康意識が高いアメリカでは、体を動かすフィットネスクラブはすでに普及しています。さらに、代替医療として、背骨や骨格の歪みを手技によって調整するなど、筋骨格系・神経系に特化したカイロプラクティックなどのヘルスケアも人気です。

アメリカでは、カイロプラクティックは国家医師資格(ドクター・オブ・カイロプラクティック=D.C.)です。2022年時点で世界には約10万人のカイロプラクターが存在するなか、アメリカのD.C.は約7万人、カナダのカイロプラクターは約9,000人と、全世界のカイロプラクターの約8割が北米地域に集中しています。日本のカイロプラクターの数は、608人です。

アメリカのカイロプラクティックの診察の幅は広く、いわゆる治療をメインにした開業医もいれば、リハビリ専門でトレーニング機材などをおいて開業する医師、エステ的なリラクゼーション目的のクリニックもあるなど、さまざまなカイロプラクティッククリニックが登場しています。

先述したソーシャルウェルネスクラブ「レメディ・プレイス」のオーナーはカイロプラクターです。「レメディ・プレイス」には伝統的な中国医学や機能医学を専門とするカイロプラクターが在籍しているようです。

3. ソーシャルウェルネスクラブのトレンド

「レメディ・プレイス」はニューヨークのマンハッタンとロサンゼルスのウェストハリウッドに2店舗を、「ガイア・ノマヤ」はニューヨークのブルックリンに1店舗を構えています。ニューヨーク、ロサンゼルスといったリベラルで新しいもの好き、ヘルスコンシャス(健康意識の高い)なライフスタイルが重視される地域で展開しており、富裕層をターゲットに事業を展開しているようです。

“ソーシャル”ウェルネスクラブの名前が示すとおり、マスマーケティング的に大量の会員を獲得するのではなく、会員の口コミを通してメンバーを増やしていく施策を行っている模様で、まだ一般層に広く認知されているとまではいえないようです。セレブの目撃情報もあるようなので、セレブ層を中心に認知を広げていく戦略をとっているのかもしれません。

4. アメリカ在住の日本人が見た「レメディ・プレイス」

「レメディ・プレイス」ロサンゼルスの店舗があるのは、ウェストハリウッドのサンセット通り。もう数ブロックも歩けばビバリーヒルズに近づくという繁華街の最終地点のビルの1階にあります。平日は9時から18時、土日は10時から18時という営業時間になっており、通常のフィットネスクラブが5時から23時くらいまで営業していることを考えると、かなり短い営業時間になっています。病院の診療時間をイメージしたほうが近いかもしれません。

コンセプトは「ソーシャル×ウェルネス」 LAとNYに登場した話題のソーシャルクラブ2店をレポート

個人会費は月々495ドルからとなっていますが、個人セッションが会費内に含まれているため、破格に高いというほどではありません。一般的に、カイロプラクティックの診察を受けると、1回あたり約80〜100ドルかかります。高級フィットネスクラブの「Equninox(イクイノックス)」の現在の月会費は約250〜300ドル、「Bay Club」は200〜250ドルほどですが、個人セッションなどを受ける際には別途費用が必要になります。

月額会員向けのプランのほかにも、空港から直行して受けられる「時差ボケ解消セッション」としてアイスバス(低温のお風呂と呼吸法を組み合わせたセッション)と酸素カプセルのセットを200ドルで受けられるなど、さまざまなサービスパッケージがあります。

日曜日の午前10時半くらいに、店舗前を通りかかったところ、30〜40代くらいのカップル1組と、女性2人組が入店していきました。ラフな服装で、ほぼ手ぶらという軽装で、気軽に入店できるようでした。

5. アメリカ在住の日本人が見た「ガイア・ノマヤ」

ニューヨークのブルックリンにある「ガイア・ノマヤ」は、繁華街のなかにあります。店舗は広く、レンタルスペースやカフェとしても打ち出していて、カフェだけの利用も可能。コロンビア料理のお店とタイアップしたカフェでは、オーガニックでヘルシーなメニューが提供されています。「レメディ・プレイス」の閉鎖的な高級イメージとは対照的な、オープンで親しみやすいイメージです。

月会費は200ドルからと、高級というイメージはありません。通常のフィットネスクラブでは週7日の営業が多いのに対し、「ガイア・ノマヤ」は月曜・火曜日が休館日となっており、週5日のみの営業となっています。

ヨガやサウンドイベントがメインとなっており、塩釜の洞窟内での瞑想クラスや、音叉などを利用したスピリチュアル的なクラスやイベントも多いよう。セッション可能なトレーナーの顔写真が公開されている点も、親しみやすく感じられます。毎週のように音楽ライブイベントも実施されており、20ドルからと気軽に参加できる価格設定になっています。

6. まとめ

「レメディ・プレイス」がカイロプラクティックを主体とした医療行為を打ち出しているのに対し、「ガイア・ノマヤ」はイベントやオープンなグループセッションなど、ソーシャル的な活動が多いように、同じソーシャルウェルネスクラブをうたう店舗であっても、コンセプトはそれぞれです。

「ウェルネス」や「ウェルビーイング」は、生涯にわたって健康的な生活を送るうえで重要な概念です。日本のフィットネス業界においても、さらなる体験価値の向上のために、「医療」「ソーシャル性」といった要素が必要になってくるのかもしれません。現在はまだ店舗も少ないソーシャルウェルネスクラブですが、この後の動向も注目していきたいところです。

(取材・写真 村山 房子 / 文 松 弥々子 / 編集 松居 恵都子)

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