24時間ジムALWAYS EXCERCISEは新型コロナの感染拡大により2020年4月に第1回目の緊急事態宣言が出る直前の2月に1店舗目をオープンしました。それにもかかわらず、入会受付時には行列ができるほどの人々を集め、4年間で九州3県に合計7店舗を展開するまでに成長しました。オーナーである株式会社勇翔相談役の八尋 勇人氏が成功要因と語る戦略や、今後の展望について詳しくお話を伺いました。
INDEX
PROFILE
八尋 勇人 株式会社勇翔 相談役
海上自衛隊の航空学生を経てパイロットとして勤務していたが、アクロバット飛行に取り組みたいという夢に向け、資金作りのために独立。2020年2月に24時間ジムのALWAYS EXERCISEをオープンさせる。戦略的な出店により、順調に成長し、現在はフランチャイズ店舗を含めて福岡・鹿児島・長崎の3県で店舗を展開している。
1. 最初の店舗で行列ができるほどの集客を達成
——創業するまでの経歴について教えてください。
海上自衛隊の航空学生として防衛省に入り、パイロットとして勤務し、飛行機の教官も務めました。ただ、アクロバット飛行が好きで、いつか多くの人々の前でアクロバット飛行を披露できたらという夢があって、その資金を貯めるために自分で事業を興すことを決めました。事業を何にするかは色々考えましたが、トレーニングが好きだったこともあり、ジムの経営を選びました。しっかりした施設と運営システムを作れば運営できる自信がありました。
——1店舗目である門松店の立地に糟屋郡篠栗町を選んだ理由は何でしょうか。
福岡市の地図上で競合があるところに印をつけ、その周辺にどれくらい人口がいるか含めて入念に分析し、ここなら競合と顧客を取り合わずに運営できそうだと感じたためです。1店舗目は退職金だけで事業をスタートし、初期投資はできるだけ抑えるために、内装以外のマシンの設置などはすべて自分で行いました。
——集客は順調でしたか?
開業の3〜4ヶ月前から「すごいジムができる!」と、興味を掻き立てるような広告を出したこともあってか、ありがたいことに開業時は入会手続きの行列ができるほどの反響をいただきました。意識して、ジムへ入会する敷居を下げる取り組みを実施したこともよかったのだと思います。看板や広告では、鍛え上げた筋肉の男性画像は控え、女性の画像を使用しました。そうしたことでハードにトレーニングする雰囲気が抑えられて、女性、男性かかわらず、運動初心者やご高齢の方も入りやすかったのだと思います。
異国にいるような楽しい気分でトレーニングしていただけるよう、天井が高く広々としたアメリカのジムのような施設デザインにしたことも好評でした。現在、4割を女性会員が占めています。一般的なジムより女性が多いことも、さらに入会しやすい雰囲気づくりにつながっています。
2. 正攻法では勝てない。ALWAYS EXCERCISEの戦略的出店
——1店舗目が成功して2店舗以降はどのような経緯で出店されましたか?
1店舗目の集客が好調すぎて混雑するようになってしまったんです。お客さまを分散させるためや、売上を高めるために店舗を増やしていくことを決めました。中心地である福岡市内は大手ジムも多く、規模的に張り合うのが難しいと考えて、私の地元である糟屋郡でまずはドミナント展開をしていくことにしました。
——その後、鹿児島や長崎などにも順調に出店されています。
女性や運動初心者、ご高齢の方が入会しやすい雰囲気のほか、お得な料金設定が刺さっているのだと思います。例えば、24時間いつでも利用できる6,980円(税込)の「24時間会員」が基本プランですが、同居家族であれば2人目は入会金や会費が無料、3人目以降は半額で会員になることができます。その分、1年間在籍していただくという期間の縛りは設けています。入会するとパーソナルトレーニングが4回無料で受けられる特典などもあります。1ヶ月で400名を集客した店舗もありますよ。
もう1つほかのジムと違うのは、当社は「スタッフがいる時間帯がスタッフアワー」という考え方なので、あえてスタッフアワーをあらかじめ設定していないんです。スタッフは比較的自由に働く時間を選べるので喜んでくれています。
——1店舗目同様、内装施工以外のほとんどを自分たちで実施されているそうで、ランニングコストなども安く済みそうですね。
自分たちでほぼすべてを企画し、図面を書いたり、資材を買い付けたりすることで初期費用もランニングコストも落とすことができるので、失敗するリスクを抑えながら、利益が出やすくなります。確保できた利益はスタッフの福利厚生にまわして働きやすい環境を用意することで、スタッフが新しいスタッフを紹介してくれるようになりました。結果的に採用コストも下げられています。
3. 想いだけでは難しい、ジムの成功には綿密な事業計画が必須
——これまでの経験から、これからジムの出店を考えている方へのアドバイスがありましたら、ぜひ教えてください。
ありがたいことに、「ジムを作りたい」と言って私の所に話を聞きに来てくれる方がいるんですが、ほとんどの方が物件取得費用や家賃、設備費がどれぐらいかかるかなどを計算してないんです。腕のいい料理人がいるからといってレストランが繁盛するわけではないように、それではうまくいかないと思います。まずは家計簿レベルでいいので、きちんと計算をして事業計画書を作ることが大切です。
——八尋さんはどのようにして勉強されたのでしょうか?
自分自身で家計簿をつけて分析したり、YouTubeなどを見て学びました。今は損益計算書などを見ながら、「このタイミングでここにお金を使おう。大手ジムはおそらくここでこういう手を打ってくるから、そのときはこうしよう」というように事業をまわすことができるようになりました。
さらに多店舗展開を通して、最初は家計簿をチェックする程度の簡単な分析だったところから「銀行から融資してもらうための事業計画書や決算書の磨き方」なども考えるようになりました。