「低酸素×パーソナルトレーニングジム」を3店舗、さらにヨガスタジオも運営しているLIF株式会社 代表取締役 本間聖也氏。同氏は、新型コロナの感染拡大により、閉店予定であった店舗を自ら希望して引き継ぎ、経営を軌道に載せました。その経緯や、お客さまに長く通い続けていただくために大切にしていることについて聞きました。
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PROFILE
本間聖也 LIF株式会社 代表取締役
小学校から高校まで8年間野球を続け選手として活躍。自身の経験からケガをしにくいトレーニングの勉強に取り組み、アメリカでMLB(メジャーリーグ・ベースボール)の下部組織にてインターンを経験する。帰国後プロのトレーナーとして活動、アスリートのみならず、俳優・モデルへのボディメイク指導、ダイエットジムでのトレーナー育成を経験。現在はトレーナーコンサルティングを行い次世代のトレーナー育成にも尽力している。
1. 落ち着いて指導できる環境を求めて自店舗を開業、恩師の提案で「低酸素×パーソナルジム」モデルを実現
——プロフィールによると、本間さんはこれまでにいろいろなことを経験されているようですね。
小学校から高校まで野球に取り組むなかで怪我をしたことをきっかけに、怪我をしにくい体づくりを目指してトレーナーになりました。 トレーナーをしながら、スポーツ用品卸売販売会社やフィットネスマシンのメーカーにも務めていたときは、朝7時ごろから終電まで働いていましたね。トレーナー1本で活動するようになってからも、トレーナーの営業のために精力的に外に出ていました。 ご高齢の方の元へ出向いて運動指導を行ったり、中学校の先生に提案して、運動部に所属する生徒の体の状態を評価させてもらったこともあります。料金は1人につき1,000円ぐらいでした。
——精力的に活動されていたんですね。
自分から外に出ていけばいろいろな人に出会えます。でも、どうしても移動時間が長くなるんですよね。次第に費やす時間と収入のバランスに疑問を感じるようになって。自分のお店を持ちたいと思うようになったのもこのころです。
その後、代々木にあったレンタルジムを利用して指導を行っていたのですが、どうやら僕の利用頻度が圧倒的に多かったようです。レンタルジムを運営する会社の方から「出資するからあなたのジムとしてプロデュースしてみない?」と声をかけられ、「低酸素×パーソナルジム」のBRE×ST(ブレスト)代々木店をプロデュースすることになりました。
—— 一般的なパーソナルジムではなく、「低酸素×パーソナルジム」とした理由は何でしょうか?
中学校の野球部時代にお世話になった監督が偶然にも低酸素空間をつくる機器を取り扱う会社の社長をしていたんです。その監督は僕をずっと応援してくださっていて、「低酸素パーソナルジムを作るのは面白いと思うよ」と提案してくれました。
環境自体に負荷がかかっているのであれば、必ずしも重さで負荷をかける必要がなくなります。マンツーマンでしっかりフォームをチェックしながらトレーニングすれば、体の状態や運動経験などに関わらず、幅広い方に安心・安全なトレーニングを提供できると感じました。
2. 「閉店するならお店を譲ってください」から始まった1ヶ月で3倍の売上を作るまでの道のり
——BRE×ST代々木店は2019年3月に開業されています。ということは、開業翌年から新型コロナの感染拡大が始まったことになります。
フィットネス業界自体が大きな打撃を受けました。BRE×ST代々木店もある日、当時の運営会社の社長が「お店をたたもうと思う」と言ったんです。そこでとっさに「僕がやります」と言いました。
「運営していくには家賃を含めてこれだけの費用がかかる。どう確保していくつもりだ?」と驚かれましたが、「これからの1ヶ月間で3ヶ月分の売上を出しますから、このジムを僕に譲渡してください」とお願いしたんです。
——本間さんはそれまで、店舗を経営した経験はなかったかと思います。経営に関する知識もなく、しかもコロナ禍でそのような発言をされた裏にはどのような想いがあったのでしょうか?
通ってくれていたお客さまはもちろんですが、それまでに指導してきた子どもたちのことが頭をよぎりました。
僕に憧れてトレーナーを目指している子どももいたので、ここでトレーナーを辞めたら「(憧れている)本間さんがトレーナーを辞めないといけない時代になってしまったんだ」と、将来に希望をもてなくなってしまいます。
絶対に辞められない、むしろ「コロナ禍でもトレーナーを続けて、社長になってやろう!」と思いました。
——素晴らしい志ですね。その状況でなかなか言えることではないと思います。ただ、1ヶ月間で3ヶ月分の売上とはかなり大変な目標だと思いますが、どんなことを実行されたのでしょうか。
既存の顧客リストに片っ端から電話をかけて「また運動しませんか?」と声をかけました。そうしたら意外と来てくれて、宣言通り1ヶ月間で3ヶ月分の売り上げを達成したんです。経営については社長になってから、実践しながら学びました。記憶が飛んでいるぐらい、無我夢中でしたね(笑)
その姿を見ていたある方から、「チャレンジする人を応援するためにも会社にしてみるのはどうか」とお話しをいただき、LIF株式会社を設立し代表に就任しました。
3. コミュニティ醸成で人の輪を広げ、ブランド統一で認知拡大を目指す
——お客さまに店舗に通い続けていただくために大切にしていることはありますか?
3つあります。1つ目はトレーニング効果をしっかりと出すことです。効果を実感することで、次の紹介につながっていきます。
2つ目は、会員さま同士をつなげることです。イベントの開催のほか、身体測定やトレーニング結果は許諾をとったうえで、会員さま同士で共有できるようにしているんです。結果に対してメッセージが寄せられたりと、パーソナルジムでありつつも、連帯感の醸成につながっています。
最後の3つ目は、人間力を磨くことですね。スキルがあることは大前提として、お客さまの心身の些細な変化に気づける力や、きめ細やかな配慮ができることは、トレーナーとしてとても大切ですから。スタッフにも「『LIFの○○さん』ではなく『○○というトレーナーがLIFで活躍している』と言われるぐらいの人間になりなさい」と伝えています。
—— 人間力を磨くことで、お客さまから選ばれるトレーナーになれるということですね。
特に低酸素ジムできちんとトレーニング効果を出していくためには、パルスオキシメーターで血中の酸素濃度を測り、その数値をもとにトレーニング効果を見極めたり、負荷を判断したりと繊細な調整が必要なんです。トレーナーとしてスキルアップしたい人に低酸素ジムはとてもいい環境だと感じています。
——今後の店舗展開についてはどのようにお考えですか?
今、当社が運営している低酸素ジムは3店舗あるのですが、それぞれ違う名称にしています。これは、スタッフがいつか独立したときを考えてのことでしたが、それぞれ1店舗だとなかなか認知が広がらないんですよね。
特に低酸素ジムはまだアッパー層やアスリート向けのものと思われている傾向があるので、もっと一般の方にも利用していただけるカジュアルなものにしたいんです。
そのためにも、今は認知拡大のフェーズと考え、今年は「LIF」ブランドへの統一を予定しています。ブランド統一後に日本であと5店舗ぐらい、その先では海外へも出店したいと考えています。
——トレーナー、そして経営者として忙しい日々かと思いますが、本間さんにとって息抜きになっていることは何でしょうか?
1歳の娘と遊んでいるときですね。あと、映画を見ることも好きです。最近見てよかったのは、『ワンチャンス』。自分が好きなことで、1人でも応援してくれる人がいるならばそれは価値があることで、辞めないほうがいいという内容にとても共感しました。