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インドアゴルフの施工業者が教える意識すべき内装や設備のポイント

2023.07.03

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インドアゴルフの施工業者が教える意識すべき内装や設備のポイント

インドアゴルフ施設の物件を決めたあと、スムーズに開業するためにはどのようなことを意識して施工を進めればよいのでしょうか。あやふやなまま施工を進めてしまい、施工期間に大きな遅れが発生してしまうと、売上が上がらない状態で物件の家賃やスタッフの人件費(無人でない場合)を払い続けることになりかねません。スケジュールどおりに進行するために依頼側が事前に決めておくべきことや施工費用を少しでも安く抑えるポイントについて、これまで1,000打席以上のインドアゴルフ施設を施工しているCAG株式会社(以下、CAG)の片岡 重勝氏に聞きました。

INDEX

PROFILE

片岡 重勝 CAG株式会社 マネージングディレクター

CAG株式会社にて、数々のインドアゴルフ施設や個人宅へのゴルフ練習場の設計などに携わる。自社でも約20軒のゴルフスクールを運営しており、施設面・サービス面を含め、知識や経験に基づき多くのアドバイスを提供する。

公式Webサイトはこちら

1. インドアゴルフ施設の運営に必要な設備とは?

CAGにおける、スケルトン状態(壁や設備、内装などをすべて撤去し、建物の骨組である構造体だけの状態)からの施工数のなかで、特に多い4打席(40坪)のインドアゴルフ施設を施工する場合の主な設備や金額を紹介します。

設備費用備考
壁の設置約50万円〜 
エアコン設置工事約150万円〜 
トイレ1室約70万円〜洗面台込
天井を抜く工事約50万円〜廃材の片付け含む
天井設置工事約60万円〜 
照明器具約60万円〜 
照明器具の設置工事約60万円〜 
防音設備約100万円〜 
シミュレーションマシン約70〜700万円ショットマット、スクリーン、PC、PC台、プロジェクター、スイングカメラ含む
人工芝約20万円〜 
ブースクッション約240万円〜 
インドアゴルフの施工業者が教える意識すべき内装や設備のポイント

2. インドアゴルフ施設の施工費を抑えるには

一般的に3,000〜5,000万円かかるといわれるインドアゴルフ施設の開業費用ですが、少しでも抑えたいのが本音だと思います。そこで、設備やサービス面において、費用を抑える5つのポイントを紹介します。

2-1. ブースクッションの代わりにネットを使用する

防音や耐衝撃用のブースクッションをネットに変更することで、240万円以上かかる費用を1/10程度に抑えることが可能です。

デメリットは、2点あります。1点目は、ネットは取り付け型になるため壁から20cm程度離す必要があり、壁に直接貼ることができるブースクッションよりスペースをとることです。2点目は、打球がネットに当たることで穴が開きやすいなど、耐久性においてもブースクッションより劣ることです。

2-2. トイレやエアコンが設置されている居抜き物件を利用する

トイレやエアコン、防災設備という店舗運営に必須の設備がそろっている居抜き物件であれば、施工費用を節約できます。加えて、天井がスケルトン状態でインドアゴルフ施設の運営に必要な天井高3mが確保できるのであれば、さらに費用を抑えることが可能です。デメリットは、既存の設備を活かすため、デザインに制約が出ることです。

2-3. シャワールームやトイレなどの設備設置の必要性を検討する

以下4つの設備は、「会員の利便性を考慮して充実させたはいいものの、実際にはほとんど使われなかった」というケースが目立つものです。立地やターゲット層をよく考えたうえで、設備を設置するか否か、設置する場合はいくつ設置するのが適切なのか、冷静に判断することをおすすめします。

2-3-1. シャワールーム

さっと練習してそのまま帰る方が多いため、シャワールームはほとんど利用されないケースが多くみられます。CAGが運営する施設や施工を担当したお客さまの施設でも、シャワールームの利用率は都心・郊外問わず、わずか10%未満です。要因としては、施設が住宅地にある場合は近所にお住まいの方が、郊外であれば車で来館する方が多いこと、ゴルフ練習自体がそれほど汗をかくものでないためです。

2-3-2. トイレ

1コマの利用時間が約50〜60分ほどのインドアゴルフ施設においては、利用されない方も多いのが現状です。男女別に設けるならば各1つ、または男女兼用にする場合も1つあれば問題ありません。

2-3-3. 更衣室

CAGが都心で運営する施設では、会社帰りの方がスーツからゴルフウェアに着替える際に利用されるケースがありますが、それでも運営する施設全体での利用率は10%未満と低い状況です。

更衣室を設置する場合は、男女兼用で1つにするか、少し広めにスペースをとったトイレにフィッティングボード(収納式の着替え台)を設置して、更衣室を兼ねたトイレにする方法をおすすめします。

2-3-4. バンカー・パター専用練習コーナー

バンカーコースの設置は約70〜80万円ほどがかかるうえ、使用するたびに砂が散るので定期的な掃除や砂の補充が欠かせません。パターコースの設置には、約20万円かかります。どちらの練習コースも比較的設置費用が高額であるにも関わらず、CAGが施工を担当した施設では、別料金を支払ってまで使いたいという会員はほとんどいないのが現状です。そのため、会費以外の付帯収入アップにつなげるのは難しいのではないかと推察されます。

2-3-5. 開業地域によってはレンタルサービスを提供しない

開業地域によっては、ゴルフシューズやゴルフクラブなどのレンタルサービスを実施しない判断も有効です。都心では需要がありますが、車で来館する会員が多い地方や郊外にある施設では、大半が持参してくるため、レンタルの利用はほとんどありません。

2-3-6. フランチャイズ(FC)に加盟する

フランチャイズに加盟することで、本部が施工費の一部をサポートしてくれる場合もあります。具体的な金額は企業によって異なるため、事前に本部に確認するとよいでしょう。

3. インドアゴルフ施設の施工相談から開業までの流れと期間

インドアゴルフ施設の施工相談からオープンまでにかかる平均期間は、約2ヶ月です。内訳は、物件チェックから着工※1までに約1ヶ月、その後の施工に1ヶ月です。

施工※2相談から開業日までの流れと各フェーズにおいて必要な期間は、表の通りです。

項目作業日数
ご連絡依頼者との打ち合わせ日および現地調査日などを調整7
図面概要書(図面含む)を入手8
現地調査現地調査1
見積用業者現地調査2
打合せ運営方法や希望のレイアウト、店舗イメージを確認1
提案資料作成1
提案資料をもとに説明、施設概要をすり合わせ3
図面作成および依頼者へ確認1
見積説明および調整箇所の確認など3
再見積金額について説明3
初回レイアウト作成レイアウト作成8
レイアウト修正5
見積積算10
再積算4
図面作成、CG、仕上げサンプル作成8
修正3
費用において調整が可能な部分を提案4
契約(発注)設計契約3
工事契約6
着工準備期間5
着工1
工事(工程は内容により変動)8
完工完工引き渡し2

※複数の作業は同時進行で実施

4. インドアゴルフ施設の施工をスムーズに進めるためのポイント

主に2点あります。

1点目は、施設のコンセプトとデザインイメージです。

最も重要なのは「会員にどのような体験(練習)を提供したいのか」ということです。ゆったりとした空間で仲間と楽しめるようにするのか、1人黙々とスキルアップに集中できる環境にするのか。理想に近い店舗デザインの写真や動画があると、より具体的にイメージを伝えやすくなります。コンセプトやデザインのイメージを膨らませるためには、ベンチマークしている競合施設に足を運んだり、インターネットを利用して調べてみるとよいでしょう。

2点目は、シミュレーションマシン(以下、マシン)の選定です。

マシンを選定するためには、前述の「会員にどのような体験(練習)を提供したいのか」が重要です。提供したい内容にあわせて必要な機能を洗い出し、それらが搭載されているマシンをいくつかピックアップしましょう。続いて、設置したい場所の広さや電源の位置を確認してください。

マシンは開業日までに納品されている必要があるので、購入前に必ず納品スケジュールを確認してください。現在日本で流通しているマシンは15種類あり、その多くは韓国で製造されています。新型コロナウイルス流行の影響や半導体不足によって納品スケジュールが遅延する可能性もあるため、注意が必要です。

インドアゴルフ施設を開業する際は、さまざまな要因を考慮して、余裕をもったスケジュールを立てることをおすすめします。

5. インドアゴルフ施設の開業後に起こりがちなトラブル

開業後に起こりがちな施設トラブルには、どのようなものがあるのでしょうか。着工前の段階から対応策を講じておくことで、開業後のトラブルを最小限に抑えることができます。

5-1. 打球の跳ね返りがひどい

スクリーンやネットを壁に固定しているワイヤー近くは張りが出るため、どうしてもほかの部分より打球が跳ね返りやすくなります。100%防ぐことは難しいため、CAGでも依頼者には事前にその懸念を伝えているほか、跳ね返った打球の速度を緩和する天タレネットなどの予防策を提案しています。費用は10万円ほどかかりますが、安全面を考えると付けておくことをおすすめします。

5-2. マットに打球が当たる音がうるさい

ゴルフマットにクッション性がないと、打球が跳ね返る際にベニヤ板に当たったときのような音がすることがあり、会員や周辺住人からの騒音クレームにつながる場合があります。ゴルフマットは最低2.5cm以上の厚みがあるようなクッション性の高いものを選んでおくと安心です。

5-3. 照明器具のちらつきで弾道の測定が正確にできない

弾道測定機能の性能が高いマシンの場合、撮影スピードが非常に早いために、フリッカー(照明器具の仕様上のちらつき)を拾ってしまい、画像に横筋が入ったり、動きを正確に計測できないという現象(フリッカー現象)が発生します。そのため、照明器具を選定する際は、注意が必要です。

CAGではマシンに合わせてフリッカー現象が起きない照明を選んでいるほか、新しい照明を使用する際には、事前にマシンメーカーに送り、フリッカー現象が起きないことを確認しています。

また、プロジェクターには、投影方式としてDLP方式、LCOS方式、3LCD方式の3パターンあり、プロジェクターによってもフリッカー現象が起こります。プロジェクター導入の際も、フリッカーが起きない3LCD方式を選ぶとよいでしょう。

5-4. 打球の威力でスクリーンを支えるアンカーが抜ける

インドアゴルフ施設は幅広い方が利用します。ドライビングコンテストで最長飛距離を出すような選手が利用した場合、打球の威力でスクリーンを支えるアンカーが抜けてしまうことがあります。アンカーが抜けないように、あらかじめ強度が増す金物の選定といった対策をしておくと良いでしょう。

6. 多様化する日本のインドアゴルフ施設

インドアゴルフ施設の増加とともに、近年はデザインにもこだわる施設が増えています。以前は、壁は黒や緑などのほぼ2色使いだった配色も、白や青などが使われるようになってきています。

例を挙げると、観葉植物を配置したり、ゆったりとしたソファを用意するなどしてリゾート地のような雰囲気を演出したり、マシンのスクリーンやプロジェクターを利用して、練習をしていないときは映画を楽しめるシアタールームとしている施設もあります。これまではゴルフの練習のみに特化した、やや無機質な空間が多かったところ、彩りのある明るい空間を提供するケースが増えてきています。設備面では、180度ぐるっと周囲を囲むかたちでスクリーンを設置する施設も出てきています。

慣習にとらわれない斬新なデザインや会員を惹きつける新たな工夫が生まれている背景のひとつに、飲食業や小売、IT企業など別の業種を手がけている経営者の参入の増加があるのではないかと推察しています。

インドアゴルフ施設の増加や多様化が進むなかで新しい店舗を開業する際には、差別化を意識した店舗のコンセプトづくりやデザイン設計が成功の鍵を握ります。差別化を図る手段の一つとして、CAGが運営するインドアゴルフ施設では、定期的に海外のゴルフ場でのラウンドツアーを開催し、会員のスキルアップへのモチベーションを高めたり、継続率の向上につなげるためのコミュニティづくりに取り組んでいます。コロナ禍で一時的に中止していましたが、2023年には収束の兆しが見えてきたことから、現在再開する方向で準備を進めています。

今後のインドアゴルフ施設においては、快適な施設環境の創出・整備だけでなく、施設会員同士をつなげるサービスやイベントを提供するなど、より長く利用してもらえる仕組みづくりが必須になっていくと考えられます。

  • ※1 着工(ちゃっこう)とは建物の工事を始めることです。
  • ※2 施工(せこう)とは設計図や仕様図をもとに、計画的に建造物を造ることです。

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