大阪を中心に加圧スタジオ「Lakshimi+」(ラクシュミー)を展開する株式会社Lakshimi。加圧トレーニングの提供から始まり、近年はピラティスや、同じ建物内にある整骨院やゴルフ練習場と連携するなどサービスの幅を広げています。代表の藤田哲士氏に、加圧スタジオを立ち上げた理由や集客におけるポイントを聞きました。
INDEX
PROFILE
藤田哲士 株式会社Lakshimi 代表取締役
大阪高校、大阪経済大学と、学生時代は陸上競技の強豪校で中距離走の選手として活躍。大学卒業後は製薬会社に就職し、医療業界と携わるようになったことで健康について改めて考えるようになり、自ら加圧スタジオ「Lakshimi+」を立ち上げる。大阪で現在までに4店舗を展開するほか、フィットネスジムとパーソナルトレーニング専門店舗「BEZEL」3店舗の運営も手がけている。
1. 人が健康であり続けられるためにフィットネス事業の立ち上げを決意
——藤田さんのこれまでの経歴を教えてください。
学生時代は陸上競技の強豪校で中距離走の選手として多くの大会に出場しました。大学卒業後は製薬会社へ就職しMR職(※)に就いて、色々な病院を周りました。そこで比較的容易に薬が処方されてしまうケースがあることを知り、病気を治す治療が必ずしも健康と直結していないことに懸念を感じるようになりました。
僕自身、車で病院を周る日々でどんどん体重が増えてしまい、高血圧や痛風に悩まされるようになってしまったこともあり、自分含めて、人が健康であり続けられる事業に携わりたいと考え、フィットネス事業を立ち上げることを決めました。
※医療従事者に向けて、主に医薬品に関する有用性・安全性などの情報提供や、医薬品の営業・提案活動を行う仕事。医薬品について詳しい知識が必要となる。
——健康サービスを提供しているほかの企業への転職は考えなかったのでしょうか。
30歳という節目だったことや、それなりに蓄えもあったので、どうせなら自分の力で取り組んでみようと思ったんです。陸上選手の経験からトレーニングに関する知識もありましたし、学生時代の友人のなかにはスポーツトレーナーや柔道整復師になった者もいましたので、彼らに声をかけて、2008年に加圧スタジオ「Lakshimi+」江坂店をオープンしました。
藤田哲士氏
2. 確かな効果と短時間で可能な効率性に魅了され加圧トレーニングを選択
——提供サービスに加圧トレーニングを選ばれたのはなぜでしょうか。
知り合いから勧めてもらったのですが、よく知らなかったので最初は半信半疑だったんです。でも、加圧の効果に対するエビデンスを確認したり、加圧トレーニングについて知れば知るほど、その効果に魅力を感じるようになりました。
実際、自分でも加圧トレーニングに取り組んで体も変わりましたし、血管年齢や脈圧が年齢を重ねても悪化することなく、キープできています。もちろん食生活も関係していると思いますが、加圧トレーニングの影響も間違いなくあると感じています。お客さまのなかにも、動きが悪かった箇所の動きがよくなったり痛みが改善したりと、怪我の回復にも加圧トレーニングは適しています。
——当時は、今ほど健康への意識が高まっていなかったと思いますが、どのようなプロモーションを行ったのでしょうか。
著名人が取り組んでいたこともあり、加圧トレーニングという名前自体は広まっていました。ただ、パーソナルトレーニングとは別物と認識されていましたね。一人ひとりの方に合わせて適正な圧に調整する必要がある加圧トレーニングは間違いなくパーソナルトレーニングの1つですから、「マンツーマンで指導します」ということを全面に出しました。
そのほかにも、最短30分と短時間でトレーニング効果を得られる特徴を活かして、「短時間で、かつ効果的にトレーニングできて、自分の時間を効率的に使える」ことや、食事指導のサービスがあることをアピールしました。健康的な食事指導には、MR時代に学んだ知識が役立ちました。
——お客さまの反応はどうでしたか?
ホームページのSEO対策やホットペッパーに広告を出した程度ですが、反応は上々でした。1号店をオープンした当時は広告媒体自体が少なかったので、ホットペッパーに一番安価なプランで出稿しても1ヶ月で30件もの問い合わせがきました。今は、フィットネス専門媒体など広告媒体の種類や数も増えていますし、競合も増えていて、集客が難しい時代になりました。
——それでも2店舗目、3店舗目と店舗を増やされています。お客さまが通い続けてくれる理由は何だと考えていますか。
お客さまにとって、トレーナーが「楽しくコミュニケーションができて、健康について役立つ情報を提供してくれる“特別な人”」という存在になれているからだと思います。そのうえ体もよりよく変化すれば、店舗に通う価値が出るのでお客さまは継続してくれます。それは当時も今も変わりません。
3. 初めての採用で4人増員、顧客を増やすことに成功
——これまでの運営のなかで、大変だったことや、決断が難しかったことは何でしょうか。
初めてトレーナーを採用することを決断したときでしょうか。個人事業主としてジムを営んでいる方は、同じように悩まれた経験があるのではないかと思います。売上から自分の生活費や店舗の光熱費などいろいろな費用を差し引くと、手元に残る利益はほんのわずかです。そこをさらに削って人を採用するのか、決断するのは簡単ではありません。でも、採用せず自分だけでお客さまに対応し続けるのは大変ですし、お客さまの数も増やせませんから、ここは振り切りが必要ですね。
僕は幸いにもMR時代の貯金があったので、思い切って一気に4人採用したことで、かなりお客さまを増やすことができました。1レッスン75分を1人のトレーナーに受け持たせてはトレーナーへの負荷も高く、セッション数も多く設定できませんが、セッションの最初に行う15分間の体幹トレーニングなど加圧トレーナーの資格がなくても対応できるものは別のトレーナーに任せることで、スムーズにセッションを回せるようになりました。
——現在、運営においてどのような部分に課題を感じていますか?
フィットネス事業に限ったことではありませんが、結婚や出産など人生の節目でトレーナーの退職が発生するので、継続して採用と育成に取り組む必要があることですね。既存のスタッフに対してもスキルアップに向けた研修が必要ですし、以前は加圧トレーニングのみでしたが、今はピラティスも提供しているので、ピラティスインストラクターの育成も必要です。自分も現場に立ちながら人材を育成していくことに苦労しています。
——採用の課題はほかの店舗さまでも多く挙げられます。それでもサービスを拡充されているところが素晴らしいと思います。最後に、今後の目標について教えてください。
加圧トレーニングやピラティス、ストレッチなど幅広いサービスを提供している特徴を活かして「総合パーソナルジム」のような位置付けの店舗に変わりたいと考えています。幸い、店舗の歴史とともにトレーナーも経験豊富な者が増えてきたので、これからも人々の様々なニーズに対応していきたいと思います。