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「トライアングルエヒメ」で愛媛県をデジタル実装フィールドナンバー1県へ、デジタル活用による地域活性化への取り組み

2025.04.16

※山下陽平氏(写真左)と金子哲也氏

2022年度にスタートした、デジタル・ソリューションと関連技術(AIやIoT、ロボティクスなど)を愛媛県内の事業者・自治体などに実装し、地域課題の解決にチャレンジする、デジタル実装加速化プロジェクト「TRY ANGLE EHIME」(以下、「トライアングルエヒメ」)。2024年度には株式会社hacomon(以下、hacomono)が提案した「無人民泊システム導入によるインバウンド向け遍路宿の環境整備」が採択されました。「トライアングルエヒメ」事務局にて、県内事業者の稼ぐ力の強化とデジタル企業の成長をサポートしている山下陽平氏と金子哲也氏に、プロジェクトの背景や実装までのポイント、成功事例などについてお話をお聞きしました。

INDEX

PROFILE

山下 陽平 愛媛県企画振興部 デジタル戦略局 デジタルシフト推進課 デジタル実装G リーダー

愛媛県南宇和郡愛南町出身。広島県庁派遣、民間企業研修派遣後、愛媛県営業本部を経て、トライアングルエヒメプロジェクトリーダー。本県産業の稼ぐ力の創出や現場でデジタルを使いこなす人材育成のサポートのほか、事業者同士でのビジネス連携など新たな価値の創出にもつなげる。

金子 哲也 トライアングルエヒメ事務局 共創コーディネーター

愛媛県八幡浜市出身。株式会社エス・ピー・シーにて出版や新規事業開発を担い、令和4・5年度には愛媛県デジタル戦略局スマート行政推進課に出向。トライアングルエヒメに立ち上げから携わる。

1. 実証実験で終わらせない、実装重視のプロジェクトへ

「トライアングルエヒメ」の目的は、人口減少や少子高齢化、労働者不足などの地域課題を解決し、愛媛県内の事業者の「稼ぐ力」を強化することです。そこにデジタル・ソリューションやロボットなど、現場が使いこなせるデジタルを導入するとともに、県外企業の誘致にもつなげることで、「デジタル実装フィールドNo.1」の自治体となることを目指しています。3年間で約2,500人のデジタル人材育成と県外デジタル企業14社の県内拠点設置にもつながっています。

採択された企業は、愛媛県内の事業者や企業とタッグを組んで実装検証に取り組みます。過去にも様々な企業が実証実験で入ってきましたが、地域での実装や定着につなげるのは本当に難しいものでした。そこで、「トライアングルエヒメ」では、デジタルを現場が使いこなす「実装」に重きを置き、募集時に次のような2つの要件を設定しました。

要件1.実証実験で終わらせず、現場に必要な機能・規模にローカライズし、現場が使いこなせるまで伴走すること
要件2.実装検証において得られたノウハウは地域全体で共有し、効果を広く波及させること

特に要件2.においては、採択プロジェクトごとに年3回以上の勉強会を開催し、各企業が実装検証の成果を共有しています。例えば、観光事業に関する取り組み事例について共有する際には、宿泊関係者を招待し、報告終了後に「この技術を使ってみませんか?」とその場で呼びかけることで、導入に意欲的な企業を増やしています。

「現場が本気で使いたいと思わない限り、良いデジタル技術を導入したところで定着しません。実装検証に参加する県内事業者や地元企業の方にも、導入したら“使いこなす”覚悟をもち、導入後は積極的に周囲にも広めていただくようお願いしています」(山下氏)

成果を報告するフォーマットは統一することで、誰でもわかりやすく情報を把握できるようにしています。この報告書は実際に「トライアングルエヒメ」のホームページからも閲覧することが可能です。

「トライアングルエヒメ」で愛媛県をデジタル実装フィールドナンバー1県へ デジタル活用による地域活性化への取り組み

3月にはhacomonoオフィスにて勉強会を開催

2. 名人のノウハウを可視化し、愛媛県の農場活性化を目指す

「トライアングルエヒメ」ではすでに多くの成果事例が生まれています。その1つが、愛媛県の著名な篤農家(※農業の研究に熱心に取り組んでいる農家)である黒田伊智男氏のノウハウを可視化し、地域の柑橘農家全体の収穫量を向上させる取り組みです。黒田氏は、一般的な柑橘農家の約2倍の収穫量を実現していることで、周囲の農業関係者から「黒田名人」と呼ばれています。

「黒田さんの農法のポイントは、土壌の水分量を一定に保つことです。黒田さんは長年の経験で、葉のしなり具合から土壌の水分量を判断し、最適なタイミングで適正量の水やりを行っていました。その経験値をデータ化することで、他の農家にも活用できるようにしようと考えました」(金子氏)

山下氏が「農業分野では初。規模としてもおそらく国内最大級」と語る実装検証では、黒田氏の240ヘクタールの広大な農地に、データを収集するための通信機器7基と120本の土壌水分センサーを設置。温度、湿度、土壌水分、土壌温度、日射量、潅水量などを計測しています。このデータは地域の新規就農者をはじめとした農家で活用され、収穫量の向上に貢献しています。データがあることで近年の猛暑や大雨など気候変動の影響を受けにくく、安定した収穫が見込めるようになりました。

この取り組みは大手メディアや県外の新規就農希望者にも注目され、新規就農者の増加や、それに伴う移住への問い合わせが増えるという好循環が生まれているほか、松山市でのアボカド栽培や今治市での里芋・レモン栽培にも応用される予定と、広がりを見せています。

「トライアングルエヒメ」で愛媛県をデジタル実装フィールドナンバー1県へ デジタル活用による地域活性化への取り組み

黒田伊智男氏の経験値をデータ化し、地域の農家と共有することで安定した収穫につながった

3. スムーズな実装化のための3つのポイント

2024年度は北海道から沖縄まで過去最多の335件もの応募があり、着実に実装が進む「トライアングルエヒメ」ですが、プロジェクト開始当初は様々な課題がありました。山下氏と金子氏は、各課題を一つひとつ解決していった経験から、スムーズな実装化に必要なポイントとして次の3つを挙げます。

1.現場の真の課題を見極める

現場からの「⚪︎⚪︎に困っているから解決したい」という声を元に対応を進めていたものの、費用負担が発生することがわかった途端、協力を渋るというケースがありました。「無料でサポートしてくれるなら」という軽い気持ちから発言したものなのか、自己負担も厭わないほど解決したい課題であるのかを見極めることが大切です。

2.応募企業の意気込みを見極める

「実装支援費を出してくれるなら取り組んでみたい」ではなく、「愛媛県の課題を解決したい」「地域の発展に貢献したい」という意識の高い企業に参加してもらうことが実装化を成功させる鍵となります。

3.課題解決への意欲が高い現場のキーパーソンを巻き込む

地域の課題解決に前向きで、周囲にもその熱意を伝播させられる人がプロジェクトに加わると、実装が加速します。山下氏、金子氏はそのような人物について、自らの熱意が高く、周囲の心にも火を付けてくれるという意味を込めて「自然型や可燃型の人材」と呼び、存在の重要性を強調します。

さらに、金子氏はプロジェクト開始当初を振り返り、場合によっては正攻法とは異なる方法にも柔軟に対応する必要があると述べました。

「実装への協力を仰ぐには、企業であればまずトップの方に説明するのが正攻法だと思います。しかし、トップの方は実績や費用などを重視する分、『過去の実証実験で、実装にまで至ったものがない』『DXなんてよくわからないし、費用が高そう』と、うまく進まないことがあります。そこで、現場で本当に困っている方たちに説明し、『やってみたい』と言ってくださる方を地道に増やしていくことに取り組みました。プロジェクトがスタートした当初、この部分に苦労しましたが、取り組みへの認知が広がるにつれて協力的な姿勢を示してくださる企業が増えていきました」

4. 県内の就職支援にも。認知を拡大し、さらなる好循環の発生を目指す

現在、「トライアングルエヒメ」に参加している県外のデジタル事業者と県内の事業者は、勉強会を通じてとても良好な関係性を築いています。一方、山下氏は実装に向けた取り組みをさらに進めるため、運営改善を継続していると語ります。

「現場の課題を見極め、必要なデジタル技術をマッチングさせることと同じく、県と現場、デジタル技術を提供する企業が同じ方向を向いていることも大切です。そのため、2024年度からは県庁内の関係部局とも連携を強化して採択の段階から提案の中身を確認し、応募企業との面談に参加する体制を整えました」(山下氏)

事務局では今後も運営改善に取り組みつつ、県民および県外の事業者に「トライアングルエヒメ」の取り組みを知ってもらうために、広報活動に力を入れていきます。すでに年2回の成果発表会の開催のほか、地域誌に掲載したり、SNSで積極的に取り組み内容を発信しています。将来的には、成功事例を元に、県内の学生が地元の実装企業に関心をもち、就職へとつながる好循環が生まれることも期待しています。

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