「背骨にこだわり人生を変える」をコンセプトに奈良県でピラティススタジオ「PilatesBody」を運営するアップ株式会社。代表取締役の川崎 知郁子氏は、自身がピラティスの効果に衝撃を受け、ピラティスインストラクターを目指したといいます。そのきっかけとなった出来事や、現在の指導において大切にしていることを訊きました。
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PROFILE
川崎 知郁子 アップ株式会社 代表取締役
自身の怪我をきっかけにピラティスを知り、その効果の高さからインストラクターへ。背骨を整えることで怪我をしにくく、また疲れにくい体づくりを目指して指導を行う。効果を実感した方からの口コミ入会で順調に会員数を伸ばし、現在は、設備や提供するメニューが異なる3店舗を運営する。
1. 1回のレッスンで劇的に痛みが改善、骨折を機にピラティスの効果を知る
——ピラティスとの出合いを教えてください。
14歳で大病を患い、高校卒業まで好きだった運動ができませんでした。だから運動が解禁された大学時代はいろいろな運動やスポーツに挑戦しました。なかでもダンスはインストラクターの資格を取得したほど楽しくて、社会人になってからも、昼間は証券会社の営業、夜はダンスインストラクターとして活動していました。ただ、動き過ぎたためか、ある日、背骨を骨折してしまったんです。
骨折自体は次第に治癒したものの背骨の痛みがとれず、ピラティスを指導していたある方に相談したところ、自分のレッスンに出るよう勧められました。参加してみたら、1回のレッスンだけで痛みが劇的に改善したんです。今から思うと、背骨の歪みが改善したからだと思います。「これは魔法だ」と衝撃を受けましたね。そこからピラティスに夢中になりました。
——どのような経緯で店舗を立ち上げることになったのでしょうか?
ピラティスインストラクターの資格を取得した後、あるピラティススタジオの店長になったのですが、指導を続けるうちに知識不足を強く感じるようになりました。リハビリためのエクササイズとしてピラティスが生まれた経緯もあってか、「交通事故で片足が動きづらいので改善したい」という重い悩みを抱える方も来られるのですが、適切な対処方法がわからなかったんです。そこで思い切って退職し、国内や国外へ出向いて知識に磨きをかけました。
知識やスキルに自信がもてるようになってきたころに偶然、かつて指導していた生徒さんたちから「また指導してください」と相談をもらい、再びレッスンを始めました。しばらくすると、生徒さんのなかからインストラクターの資格を取得する方が出てきたのでレッスンを増やして担当してもらううちにお客さまが増えてきたんです。経営が順調だったこともあり、私は結婚を機にスタジオを彼女たちに任せて、自分は新たにPilatesBodyを立ち上げることを決めました。
2. 初回レッスンの参加者は家族のみ、地道な販促活動で認知が向上
——立ち上げ当時の集客状況はどのような感じだったのでしょうか。
自分でチラシを作り、コピー機で500枚刷ってポスティングするなどしていましたが、なかなか認知されず、1回目のレッスンを受けに来てくれたのは、家族だけでした。ただ、地道な販促活動が実ったのか、ある日、バレエダンサーの方が入会してくれたのを皮切りに新たな入会が続き、経営が上向いていきました。
——PilatesBodyの指導の特徴や、指導で大切にしていることを教えてください。
私自身の経験を元に、「背骨を整えること」を大切にしています。その影響は大きくて、体だけでなく内面も変わる方が多いです。歪みを改善するために、動かしづらかったり痛みがある部分をあえて動かしてもらう場合もあるため、その動きが必要な理由を伝えて、きちんと理解していただくコミュニケーションも大切にしています。
——インストラクターの方のスキルも重要になりますね。育成はどのように取り組んでいるのでしょうか。
PilatesBodyで働くためには当社が設定している認定コースを受講してもらうことを必須としているほか、インストラクターのグレードもレッスンの指導経験が60回以上、600回以上、1,500回以上と3段階に分けているうえ、そこからさらにマットと専門道具、またはマシンを使用したレッスンができるかなど、全部で6段階に分けて教育しています。
なお、PilatesBodyで指導するメニューは、私がこれまでの経験から効果が高いと判断した動きを選び組み立てました。キューイング(参加者に動きを伝える声かけ)も含めてマニュアル化し、スタッフ全員が同じレベルで指導できるようにしています。
3. 質の高いレッスンによる効果が長期継続と紹介を呼ぶ好循環へ
——現在では3店舗を運営されており、大和郡山店は入会待ちとなっているそうですね。ここまで順調に進んでいる要因は何だとお考えですか?
私含めたインストラクターたちが常にスキルアップに努めていることと、スタッフに「PilatesBodyが力を入れているのは背骨を整えること」と繰り返し伝えてきたからでしょうか。日々レッスンをしていると、目の前のお客さまや指導に意識がいってしまい、つい店舗の強みや目的を忘れてしまいますから。
それ以外は、継続してくれるお客さまがいるからです。これに尽きますね。会員の約30%の方は10年以上継続してくれていますし、紹介からの入会も多いです。
——10年以上の方が30%とはすごいですね。お客さまはなぜ継続してくれるのだと思いますか?
効果を感じてくれるからだと思います。以前、「股関節が痛くて、病院からは手術を勧められているけれど、どうしても手術は避けたい」と言って来られた方がいたんですが、レッスンで「痛みがなくなった」と喜んでくれました。感動するような想像以上の効果が得られれば、お客さまは辞めません。だから当社では「普通によくなった」レベルではなく、それ以上の効果を提供することを常に目指しています。
お客さまにしっかりと目標を設定いただき、ステップアップできるフローを提供していることも継続につながっているのかもしれません。自身の体が変わることはもちろん、スキルも上がっていることを実感できれば、ワクワクしてもっと続けたくなりますよね。
——集客において、地域の特性を踏まえて意識していることはありますか?
奈良県は比較的裕福な方が多い地域のようなんですが、一般的に、一生懸命貯めたお金を出す行為はハードルが高くありませんか? 同じように、奈良県の方は、本当に自分に必要かどうか、またいいものかどうかをしっかり見極めてから購入するように感じます。そこではサービス提供業者との信頼関係も大事です。誇大広告や、典型的な営業トークをしてしまうと、入会されないですね。
——今後の目標を教えてください。
まずは10店舗を目指しています。お客さまだけでなく、インストラクターのなかにも来年で勤続10年を迎えるなどベテランの者が出てくるので、彼女たちに養成コースを任せて自分は企画・開発に注力していきたいですね。その先では、インストラクターの独立を応援するつもりで、フランチャイズにも挑戦したいと考えています。