長崎県にあるエスタミネー英語教室は、約30年前に代表である中村 美和子氏が立ち上げました。現在のように英語を学ぶことが身近ではなかった時代に、中村氏はどのようなきっかけで英語を学び、さらに英語教室を立ち上げることになったのでしょうか。その経緯や英語教師としてのやりがいについて聞きました。
INDEX
PROFILE
中村 美和子 有限会社エスタミネー 代表
短大卒業後にアメリカの大学へ進学し、16年間を過ごす。その後、生まれ育った長崎に帰国しベルギー出身の夫と喫茶店を始めるも、顧客の依頼により始めた英語指導が話題となり生徒数が増加。1995年に有限会社エスタミネーを設立してエスタミネー英語教室をスタートし、当時はまだ珍しかったネイティブスピーカーによるレッスンを提供する。アメリカの会社で働いた経験からビジネス英語にも精通し、通訳や翻訳家などとしても活動している。
1. 「アメリカに行きなさい」英語教師からの突然の提案でアメリカへ留学
—— 中村さんはなぜ英語を習得しようと考えたのでしょうか。
本当に偶然から始まったんです。高校卒業後は短大に進学したのですが、あまり楽しくなくて、卒業に最低限必要な出席日数を稼ぐために通っているような学生でした。それがある日、アメリカ人の先生から突然、自宅に招かれて「あなたは目の輝きが違う。アメリカの学校に行きなさい」と勧められたんです。
最初は驚きましたが、曽祖父は明治時代にNYで博士号を取得していますし、父も仕事で頻繁に海外に出張していたため、どこか身近に感じていたこともあって、すぐに「行ってみようかな」という気持ちになりました。4姉妹ですが、私を含めた3人は国際結婚です。当時すでに結婚してロサンゼルスに住んでいる姉がいたので、短大卒業後、彼女を頼ってロサンゼルスの大学に進学しました。
—— 向こうでの生活はいかがでしたか。
ロサンゼルスには実はビーチや国立公園など自然が身近にあり、またアメリカ映画産業の中心地であるハリウッドもあります。街中を歩いていると映画撮影中の場面に遭遇したり、レストランでは隣のテーブルに有名人がいたりと、とても楽しかったです。留学前はおとなしい性格でしたが、向こうで物怖じしていては何も進みませんから、積極的な性格に変わりましたね。大学に入る直前に今の夫であるベルギー人の彼と出会いました。
—— その後、どのようにして生まれ故郷の長崎で英語教室を始めることになったのでしょうか。
親が体調不良など様々な事情が重なり帰国し、夫が料理上手であったため小さな喫茶店を始めたんです。ある日、お客さまから「英語を教えて欲しい」と依頼されて軽い気持ちで始めてみたんですが、大学では言語学を専攻していたこともあり結構楽しく、次第に希望者も増えて、3ヶ月後には生徒数が60人になりました。しばらくすると喫茶店は手狭になったこともあり辞めて、子どもがまだ小さかったため自宅のお茶室で英語を教えることにしました。その後、かつて喫茶店で提供していて好評だったピザを求めるお客さまからの「あのピザをもう一度」という声が高まり、再度カフェを経営することになり、夫はカフェを、その2階で私は英語教室の運営に注力することにしました。そのうち夫が大学で教鞭を取ることになりカフェは閉めました。
大学卒業後、就職したオリンパス・メディカルのロスアンジェルス支店の仲間たちとクリスマス前のドレスダウンディに。写真左より4人目が中村さん
2. 英語教師は天職。子どもの可能性を広げられることが醍醐味
—— 英語教室を運営する上でどんな点にこだわりましたか。
当時の中学校や高校が提供していた英語教育は、コミュニケーションのためというより日本人の教師による試験でいい点数を取るための英語教育でした。だから私の英語教室では、生の英語と触れ合えるようにネイティブスピーカーをそろえ、さらに受験・留学対策や読解・リスニング強化には日本人の私がサポートするという形にしました。
—— ネイティブスピーカーの先生に気持ちよく働いてもらえるよう、大切にしていることはありますか。
私はアメリカで16年間生活し、最終的にグリーンカードも取得しました。それでも外国人として差別されることを感じて寂しくなることもありました。この英語教室の先生にはそのようなことを感じることなく気持ちよく働いてもらいたいので、常に尊敬の念を忘れずに接し、何かあれば全面的にサポートしています。
—— 英語教室を運営するなかで、どのような点に喜びややりがいを感じますか。
流暢でなくても、英語を通して違う国の方と交流することで世界は大きく広がります。子どもたちの心の扉を開けて考え方や視野を広げることで、人生を豊かにするサポートをできることが英語教師の醍醐味であり、私にとって英語教師は天職だと感じます。
かつての生徒の中には、成長して母子家庭や父子家庭の子どもたちのための英語教室を立ち上げた子や外国で大学院に進学して学習を続けている子、さらに大きなコーポレーションに就職し世界を飛び回っていたり、外国に住んでいる子もいます。エスタミネー英語教室が人生の目標を決めるきっかけのひとつになったのだと考えると、とても嬉しいです。
3. 行動するから見えることがある、時代に合わせたサービス開発で成長を目指す
—— 約30年間、英語教室を運営してきて、生徒の傾向に変化を感じることはありますか。
昔はグループレッスンが人気でしたが、10年ほど前からパーソナルレッスンの希望者が増えて、今では生徒の90%がパーソナルレッスンを選んでいます。共働き世帯が増えて子どもが通える時間が限られていたり、学校で教える内容や進度も変わってきたことが影響しています。
子どもたちの勉強方法も変わりましたね。昔、英語の先生は紙で単語リストを作っていましたが、今の子どもたちは「そんなものいらない」と、スマートフォンやタブレット端末を使って効率よく学びます。特に受験生になると、塾での対面授業に加えてアプリやオンラインスクールも活用しながら学習を進めています。
—— 今後、新しいカリキュラムや取り組んでみようと考えていることはありますか。
今の時代に合わせて、将来的にはAIやITデバイスを活用して、対面指導とオンライン指導を組み合わせた英語教育サービスを開発できたらと考えています。パーソナルレッスンの割合が増えて顧客単価は上がったのですが、新型コロナの感染拡大時、多くの生徒が他のオンラインサービスへ移ってしまったので、生徒数の回復を図るべくさまざまな試行を重ねているところです。
英語指導以外にも、世界のライフスタイルを発信するような取り組みにも挑戦すると面白いのではないかと考えています。ミッシェル・オバマ元大統領夫人がスピーチでかつて語っていた言葉「Do Something!」にあるように、重要なのは行動することであり、行動することでこそ新たな可能性が見えてくると信じて、これからも積極的に行動していきます。