北海道を中心に店舗を展開するジュンスポーツクラブは、代表を務める村重 欣延氏が2005年に立ち上げました。自身の競技者としての経験や一人ひとりの子どもへ寄り添う指導で会員数を増やし、現在は体操教室を中心にしつつ、スイミングやバドミントン、英語教室など幅広いサービスを提供しています。子どもが楽しみながら成長できる場をつくり続けている同氏に、開業の経緯や指導における強みについて聞きました。
INDEX
PROFILE
村重 欣延 株式会社アドレ 代表取締役社長
7歳より体操を始め、全国高等学校総合体育大会や国民体育大会体操競技会など数々の大会に出場する。大学卒業後は総合クラブへ就職。2005年、北海道にて有限会社ジュンスポーツを設立し、「ジュンスポーツクラブ」を開業。2006年には「こどもサポート企業」をビジョンに掲げる株式会社アドレを設立し、体操やスポーツ、遊びや文化を通して子どもたちの可能性を広げる活動に取り組む。児童発達支援・放課後デイサービス「ジュン・ハート」や札幌市認可保育事業「じゅんのめ保育園」「じゅんらく整骨院」などの事業も展開している。中学校教諭1種・高等学校教諭1種(保健体育)教員免許のほか、障害者スポーツ指導員、幼児体育指導員など多くの資格を保有し、札幌体操連盟理事長、児童発達支援連絡協議会会長なども務める。
1. 7歳から始めた体操、競技者としての経験を活かし指導者の道へ
—— 村重さんが体操を始められたきっかけについて教えてください。
兄が体操教室に通っていたんです。その送迎に私も付いていく形でレッスンを見学していたのですが、楽しそうに動きを真似する私を見て、7歳の時に親が入会させてくれました。中学校は体操の強豪校に、大学でも体育学部に進み、在学中にはインターハイや国体にも出場しました。大学卒業後は大手総合クラブに就職し、体操やスタジオのレッスンを担当していましたが、経営していた会社が変わることになったタイミングで将来を考え、好きな体操で独立することを決めました。当時一緒に働いていた仲間2人も賛同してくれ、3人で有限会社ジュンスポーツを立ち上げました。
—— どのような体操教室を実現したかったのでしょうか。
一人ひとりの子どもにしっかりと時間を使い、丁寧な指導を提供したいと考えました。一般的な体操教室では1人のコーチが8〜10人の生徒を担当することが多いですが、当社では6〜7人と少人数制にしています。さらに、活発な子が多くて1人のコーチで管理が難しい場合はサポート要員を追加する体制も整えています。
—— 立ち上げ当初の集客はいかがでしたか。
最初は苦労しました。当時はチラシや折り込みが主流でしたが費用がかかるため、大々的にはできません。前職のお客さまが私の独立を聞きつけて来てくださったこともあり、オープニングの体験会には100人ほど集まりましたが、入会してくれたのは半分ほどでした。半年ほどは3人とも無給でしたね。それでも、口コミでじわじわ会員数が増えて、1年ほど経った頃には会員数が200人に、2年後には500人まで増えて、運営も軌道に乗りました。
2. 元上司から学んだ、子どもが理解しやすい伝え方で一人ひとりに寄り添える指導が強み
—— 口コミで会員数が増えたとのことでしたが、保護者からはどんな点が評価されていると感じますか。
一人ひとりの子どもに寄り添った指導が評価されていると思います。実は、私自身は幼少期から体操が得意だったので、前職で指導を始めたころは「ここに手を付いてクルッと回ればいいだけだよ」というような感じで、具体的な指導ができていなかったんです。私の上司は体操経験がない方でしたが、その分、一つひとつの動きの伝え方や順番、補助の仕方まで「子どもにどう伝えたら一番わかりやすいか」をとても分析していて、本当に勉強になりました。当時の学びが、ジュンスポーツクラブの指導にも活きています。
—— 子どもたちと接する上で特に意識していることはありますか。
笑顔と言葉遣いですね。特に幼い子どもを褒める時ってつい赤ちゃん言葉を使いがちなんですが、それだと友だちのような関係になってしまいます。指導者であるコーチの指示をきちんと守ってもらうためにも、過剰な赤ちゃん言葉は控えることが大切だと考えています。
同じように、子どもを褒めることはとても大切ですが、ただ甘いだけの指導にならないよう、メリハリを意識しています。危険であったりルールを無視した行動をとった子がいたらレッスンから外して、保護者に見えるところで注意します。保護者にはレッスン終了後にその理由をしっかり説明することも欠かしません。
—— スクール運営においては保護者への対応もとても大切ですね。その他にも、保護者の信頼を得るために取り組んでいることはありますか。
保護者とは会話のキャッチボールを意識しています。コーチが保護者に子どもの様子を伝える時って「今日はこういうことを頑張ったんですよ」という報告形式になりがちなのですが、これだと保護者側が「そうなんですね、よかったです」で終わってしまうんです。会話のキャッチボールを意識すると「実は家では…」「学校では…」という、コーチが見えない部分の話をしてくれるようになります。そのようなコミュニケーションがコーチへの信頼や、さらに継続へとつながっているように感じます。
3. 会費の返金対応が評価され店舗再開後は順調に回復、新型コロナ前の会員数に
—— 苦しかったけれど、今から思えば「あれをやってよかった」と感じることはありますか。
新型コロナの感染拡大により休館した時、お客さまに会費を返金したんです。その額は1,000万円近くになりました。休館中も人件費は発生しますから正直厳しかったのですが、それを誠意ある対応と感じてくれたのか、新型コロナを機に退会したお客さまも、店舗再開後に戻ってきてくれたりと、生徒数の回復は早かったです。現在は新型コロナ前以上の生徒数となっています。
—— 今後の運営について、懸念していることはありますか。
少子化が進んでいく中で、あまり店舗を広げすぎると経営を維持することが難しくなります。まずは限られた店舗数で、多少遠くても来ていただけるようなサービスを提供していこうと考えています。また、良いサービスは安売りせずにきちんと対価をいただくつもりです。
—— 白石教室で実施しているアフタースクール事業もその1つでしょうか。
アフタースクール事業を始めた1年目はそもそも「アフタースクールとは何か?」が知られていなかったので集客に苦労しましたが、地道な営業活動で2年目から定員一杯になりました。月会費5〜7万円という価格ですが、送迎付きでプールやバドミントン、ボルダリング、勉強、英語と、多様なジャンルの習い事が1ヶ所でできますから、今は「このサービスでこの値段なら安い」と感じていただけているようです。
—— 今後、どのような部分に注力して行こうと考えていますか。
ありがたいことに新型コロナが収束して一気にお客さまが戻ってきてくれましたが、それに対して運営側の準備がまだ追いついていない部分があって。その部分を整理して、接客やサービス内容にさらに磨きをかけ、道外にももう少し店舗を広げていこうと考えています。