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「フリーランス型企業」という新たな働き方|仕事とプライベートのバランスを追い求め、辿り着いた豊かな生活

2023.07.03

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「フリーランス型企業」という新たな働き方|仕事とプライベートのバランスを追い求め、辿り着いた豊かな生活

コロナ禍の影響によってテレワークが普及したことで、ワークライフバランスを追求した柔軟な働き方ができるようになりました。スキルを活用して、場所に縛られず、フリーランスとして広く活動する方も増えています。フリーランスは一見、組織にいるよりも自由なイメージがある一方で、いざというときに頼れる上司や同僚、社会保証(一部)などがなく、そのことが心身の負担となることがあります。

今回は、フリーランスのヨガインストラクターとして活動した後、起業し、さらに昨年からは「フリーランス型企業」経営という新たな挑戦ををはじめた吉田なる氏に、人生をより豊かにするための働き方について、紹介してもらいました。

INDEX

PROFILE

吉田なる 株式会社COCO&COMPANY 代表取締役社長

高校時代にヨガに出会い、身体的な効果や心を癒す力に魅了され、大学在学中にヨガインストラクターとしてデビューする。2016年にここヨガ(現株式会社COCO&COMPANY)を立ち上げ、溝の口に「溝の口、ここヨガ。」(現COCOYOGA溝の口店)をオープン。自身もレッスンを担当しながら、メディア出演やイベントへの参加など、多方面で活躍している。

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1. 「フリーランスをやめて起業」柔軟な働き方を実現するための挑戦

フリーランスのヨガインストラクターとして活動したのち、2016年に神奈川県川崎市の溝の口に、「溝の口、ここヨガ。」を開業しました。2019年には事業成長に伴い、株式会社COCO&COMPANY(以下、COCO&COMPANY)として法人化しました。

起業には、「時間的に余裕がある生活がしたい」「急に休みをとったときの周囲への影響を最小限に止めたい」などの理由がありました。会社に所属している方からすると、フリーランスという働き方は、比較的、休みがとりやすいなど自由なイメージがあると思います。しかし、ヨガイントラクターという職業において、実情はそうでもなく、レッスンの直前や当日に休みを申請することは非常に難しいんです。そこには“同僚”と呼べる存在がいないため、代わりのインストラクターを見つけることが難しく、「運営店舗に代行の手配など迷惑をかけてしまうのを避けたい」といった思いや、また「予定の都合をつけて楽しみにしてくださっている生徒さまの期待を裏切りたくない」などの思いががあります。

ヨガインストラクターとして生きていくのであればそれは仕方がないことで、好きなことを仕事にするうえでトレードオフとなることだと思っていましたが、2匹の犬を引き取り、愛犬との生活の中で意識が変わります。「いつか、この子たちに介護が必要になったときに必要に応じて急な休みでも取れるような状況にしておきたい」「急に何かあっても休むことができない生活でいいのだろうか」と感じるようになったことが、起業を考えるきっかけとなりました。自分の会社であれば、急に休まなければならない事態になったときも、自分の責任のもと判断ができます。もっと言うと「ペットの体調不良による急な休講を理解してもらえる」顧客との関係値のあるスタジオを作りたいと思っていました。

「フリーランス型企業」という新たな働き方|仕事とプライベートのバランスを追い求め、辿り着いた豊かな生活

2. コロナ禍による路線変更で生まれた「フリーランス型企業」

溝の口に1号店をオープンしたあと、業績を伸ばし、東京都世田谷区の用賀に2店舗目を立ち上げるなど事業を拡大をしていくことになりました。私は経営者として経理や人材採用など会社のマネジメント業務を行いつつ、レッスンも担当しめまぐるしい毎日でしたが、「COCOYOGAなら人々の健康課題を解決できる」と確信しており、やりたいことは尽きませんでした。そうして気づけば、ふたたび自分の代わりがいなくて急に休むことができないといった生活が、形を変えて続行していました。

そのときに私が考えたことは、COCO&COMPANYを複数の部署から成るような、さらに大きな会社組織に成長させることでした。レッスン業務を含め、経理や人事などの業務を専門部署に任せることができれば、自分は実務から離れることができます。プライベートの不測の事態にも対応できるようなフレキシブルな働き方ができると考えたのです。

しかし、そう決意した直後の2020年から新型コロナの感染拡大が始まりました。会社を大きくするどころか現状を維持することすら難しい状態でしたが、当初は事業拡大の目標に向けて、そしてなにより生き残りのために、新規事業開発やPR強化を開始しました。抱えていたマネジメントやレッスン業務に加え、新規事業の企画、採用、人事、人材管理、営業活動、協業パートナー探し、またあるいはテレビにレギュラー出演するなどのメディア出演やイベント出演の業務も加わりました。

2022年に入り、新型コロナの流行は徐々に収束に向かいました。結果としてなんとか生き残ることはできたものの、ここから事業を拡大しコロナ禍以前に描いた理想を実現させるには、かなりの労力と時間がかかることが予想されました。コロナ禍で体力も気力も出し尽くしており、自分にやり通せる自信もなくなっていたこと、なにより、既に老年に差し掛かっている愛犬とのタイムリミットを踏まえて方針を転換することにしました。事業を拡大するのではなく、縮小することで、時間を生み出すことにしたのです。

まず、かなりの時間を投資していた人材管理の労力を減らすために、人手が必要となる新規事業の開発を止めました。同じ時期に、海外移住や妊娠・出産でスタッフが退職するという出来事が重なりましたが、彼女たちに雇用形態を変えた自由な形でサポートしてもらい、私がレッスンの多くを担当することで、採用を最小限に留めました。これにより採用・人事・マネジメントが大幅に軽減され、人が減ったことにより経理などの事務部門もかなり業務量が軽減しました。

担当するレッスンが増えたことで、お客さまともじっくりとコミュニケーションがとれるようになり、信頼関係構築につながりました。スタッフからも、「店舗で顔を合わせる機会が増えたことで、気軽に仕事の悩みを相談できるようになった」との声が聞かれ、好評です。

現在の働き方を一言で表すなら、「フリーランス型企業」という言い方が適切かもしれません。自分ができることにできる範囲で取り組む働き方は、フリーランスのようであり、他のメンバーはそれぞれ自由に働くフリーランスでありながらも、私のフリーランス的な働き方を支えてくれる強力なサポーターともいえるでしょう。

私自身はもちろんですが他のメンバーも今の働き方はとても快適であり、満足しているようです。もちろんメリットだけではありません。「フリーランス型企業」に取り組んでみたからこそわかったメリットとデメリットは、以下のとおりです。働き方に悩んでいる経営者やフリーランスの方は、新しい働き方の1つとして参考にしてみてください。

「フリーランス型企業」という新たな働き方|仕事とプライベートのバランスを追い求め、辿り着いた豊かな生活

2-1. 「フリーランス型企業」のメリット

自分の時間をつくりやすい
追加採用してまで新しい事業に取り組むことをしないため、業務量が自然と適正化され、時間的な余裕が生まれます。趣味や学びなどのプライベートの時間を増やすことが可能です。

休みがとりやすい
体調不良や、やむを得ない理由で休む際は、他メンバーがサポートしてくれるため、不安や罪悪感なく休暇を取ることができます。

心身のバランスをとりやすい
仕事と私生活のどちらかに大きく偏ると心身が休まらず、疲労しますが、「フリーランス型企業」ならほどよいバランスで両立できます。時間に融通が効くため、子育てをしながら働くこともできるでしょう。

2-2. 「フリーランス型企業」のデメリット

新しい物事に出合う機会が減る
自分が対応できる物事に、対応できる範囲で取り組んでいくので、新しい出来事に出合ったり、新しい事業が生まれるという機会が減ります。大きな新規事業は他企業と協業をすることで実現できていますが、自社だけの実績としたいという場合には難しいでしょう。

自分の能力を高めにくい
さまざまな事業を通して知識やキャリアのある方といっしょに仕事をすることは、自分の能力を高めることにもつながります。「フリーランス型企業」の働き方では、取り組む事業の規模が小さいため、自然と人間関係も縮小されます。それにより、自分の能力を引き上げてくれるような方との出会いが起こりづらくなります。
無理のない範囲で、今まで以上に意識して学んだり、人間関係を広げるように行動するとよいかもしれません。

3. 小規模な事業形態だからこそ活用すべきSNSマーケティング

「フリーランス型企業」は規模が小さいため、自社だけでは大きなプロジェクトや既得権益が絡む分野で仕事を行いづらいということがあります。私たちはミニマムな体制で、既存の事業を大切に維持することを主軸としながらも、大きな仕事・新しい仕事にもチャレンジし続けたいという企業になりました。そのためには、小さい会社でも、パートナーとして「選んでいただく」理由がないといけません。

そこでキーワードとなるのが広報PRです。特にSNSであれば、広告を出さない限り、費用もかかりません。おいしかった食事や外出先の風景など一個人として好きに投稿していたところから、これもコロナ禍をきっかけに目的のある運用を意識しました。

当時のInstagramのアルゴリズム(Instagramのシステムが、ほかのユーザーなどにどんな投稿を表示させるかを判断する仕組み)から、リール(15秒から90秒の短い動画を共有できる、Instagramの機能の1つ)に投稿するとフォロワーが伸びやすい傾向がありました。そこで、ヨガの動きを見せるリールを1ヶ月ほど毎日投稿しました。流行りのダンスやポーズなども取り入れたところ、約3,000だったフォロワー数を、3倍の約9,000まで伸ばすことに成功しました。

コロナ禍は、集客のために今まで以上に広くリーチする必要性が出てきたため、社内でSNSチームも立ち上げました。投稿は毎日行い、ユーザーの反応をWebサイトの解析ツールであるGoogle Analyticsを使ってチェックしました。投稿内容は、ヨガの愛好者に向けて、ヨガのポーズに関するアドバイスなどをはじめとする「スキルアップのために見たくなる」ものを意識したところ、徐々にフォロワーが増えていきました。

TikTokにも挑戦してみました。数万を越す再生回数を達成したこともありましたが、ヨガ愛好者とユーザーの主な年齢層が異なるためか、店舗への集客にはつながりませんでした。集客の効果最大化を狙うためには、提供する事業のユーザー層にあわせたSNSの選択が重要です。

店舗の画像をInstagramに投稿をしたときには、いつもの5〜6倍の方がスタジオまで足を運んでくれました。画像を通して、安らげる空間であるCOCOYOGAの魅力を伝えることができたからだと思います。費用をかけずに集客できる、SNSのPR効果の高さを感じた出来事でした。

身近にいた方々の協力をあおぎ、インフルエンサーとして、COCOYOGAに関する投稿や拡散に取り組んでもらったこともあります。1年半ほど実施してみた結果、売上にはつながりませんでしたが、ユーザーからの反応が増えたことで、メンバーの士気が高まるという思わぬ付随効果がありました。

コロナ禍によって、休業を余儀なくされたり、退会者も出るなど、メンバーはこの業界の行き先について大きな不安を抱えていました。Instagramを通して多くの方に応援をいただけたことが、自分のヨガインストラクターとしての存在意義を取り戻すきっかけになったようでした。

「フリーランス型企業」という新たな働き方|仕事とプライベートのバランスを追い求め、辿り着いた豊かな生活

4. 「マス向けはYouTube」「ファン向けはインスタ」目的別SNSの使い分け

2023年の3月からはInstagramからシフトするかたちでYouTubeに力を入れています。YouTubeがテレビと並ぶ、またはそれ以上のメディアとして台頭してきたことを感じたためです。今や若年層から高齢層まで、幅広い年代が見るメディアとなりつつあり、マス(大衆など不特定多数の層)向けに効果的にPRできる媒体です。

YouTubeの動画撮影を専門に扱う動画制作会社の協力の元スタートし、投稿を約2年間続けています。取り組んでみて感じるのは、時間も根気もいる作業であるということです。動画制作会社と定期的にミーティングを実施し、編集における改善点や、次の撮影内容を話し合います。そこから撮影時間を調整し、本番という流れを繰り返すことは、決して楽な作業ではありません。

PR効果を高めるためには視聴者を増やすことが必要であり、そのためにはまだ売上につながらない状態でも、良質なコンテンツを出し続けなければなりません。さらに、効果検証で、編集の仕方も視聴数に大きな影響を与えることがわかってきました。テロップのフォントを変更するだけでも違いが出ます。2023年春頃からは自社で運営することとなりましたが、まだわからないことばかりなので、細かく変化をチェックしながら最適解を見つけるべく、調整を続けています。

なお、視聴数を意識しすぎるあまり、気分の乗らないコンテンツを作成し続けるなどしてモチベーションが下がり、撮影事態が苦痛になってしまっては悪循環です。撮影内容を細かく決めすぎることなく、その場で柔軟に対応していくことも、重要だと感じています。

Instagramについては、YouTubeやテレビなどで私に興味をもってくれた方に対して、より私の人となりが伝わるような、いわゆるファン向けのコンテンツを提供することにしました。これまでのようなヨガのノウハウなどではなく、趣味や好きなファッションなど、日常の出来事を投稿しています。

5. 趣味を仕事に活かした先にある「ヨガユーザーの新規開拓」

「フリーランス型企業」に方針を転換したことで、周囲から「そのような働き方では、社会にインパクトを与えられるような、大きな仕事をすることが難しくなるのでは?」と聞かれたことがありますが、そんなことはないと考えています。

自分たちだけでは難しくとも、他社との協業や提携をすれば、大きな仕事にも取り組めると考えています。実際に、COCO&COMPANYは、さまざまな企業と共に、街づくり・健康経営・大学教育など幅広い分野で、新たな取り組みをスタートさせています。今後もたくさんの分野でさまざまな企業の協力を仰ぎながら、心身の健康を広げていきたいです。

そのような事業を通して、またCOCO&COMPANYの拡大に向けて動き出す日がくるかもしれません。しかし、今はプライベートな時間が増え、人生が豊かになっていると感じるため、「フリーランス型企業」としての働き方にとても満足しています。

今後についてですが、例えば、私は将棋を打ったり対局を見たりすることが好きなので将棋関連の番組に呼ばれたい。また美術館巡りも好きなので、美術館のアンバサダーとして声をかけてもらいたい。またあるいは、ファッションやインテリアが好きなので雑誌に寄稿したりもできたらいい。そうやって今後は、ヨガだけでない自分の趣味が仕事に結び付いていってくれたらと考えています。その先で、私と言う人間を通して他界隈の方がヨガに興味をもち、いずれ店舗を訪れてくれるような循環ができたら、どれだけ嬉しいことでしょうか。

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