パーソナルトレーニングジムを4店舗、24時間ジムを1店舗運営している株式会社リーディングヘルスケア代表取締役 橋長祐輔 氏。パーソナルトレーニングジムがまだ一般的ではない中、医療機器メーカーから独立し、現在は「LEADING」を4店舗展開する橋長氏に、開業当初や店舗展開で大変だったこと、経営をする中で大切にしていることについて聞きました。
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PROFILE
橋長祐輔 株式会社リーディングヘルスケア 代表取締役
高校まではサッカー、大学では日本体育大学でアメリカンフットボール部に所属するなど、学生時代はスポーツに打ち込む。その経験から、スポーツや健康関連の事業に関わりたいと医療機器メーカーに就職。在職中に医療認可がなくても使える高周波温熱機器「ラジオスティム」に出合い、トレーニングとボディコンディショニングを組み合わせたサービスで人々の健康をサポートしたいと、パーソナルジムがまだ一般的ではない環境のなかで独立を決意。現在はパーソナルジム4店舗と24時間ジムを1店舗運営するほか、さらなる店舗展開でパーソナルトレーナーの活躍の場を作ることに尽力している。
1. 時短×豊富なコースでライフプランに合わせて通える環境を実現
——独立されるまでの経歴を教えてください。
幼少期から高校卒業までずっとサッカー部に所属し、進学した体育大学ではアメリカンフットボール部に入部しました。ずっとスポーツに携わりたかったため、卒業後は整骨院などに向けて超音波治療器などを製造・販売している医療機器メーカーに入社し、7年半ほど在籍しました。その中で、医療認可がなくても使える「ラジオスティム」という機器があることを知りました。高周波(ラジオ波)で筋肉を温めることで痛みの減少や疲労回復を促す機器で、これを使い、筋肉のケアとトレーニングを組み合わせれば、より多くの方の体を変えられるのではないかと思い、退職して「LEADING」を立ち上げました。
——パーソナルジムでは具体的にどのようなサービスを提供されているのでしょうか?
加圧トレーニングのほかにストレッチやスポーツ整体などのコンディショニングも取り入れ、ただ鍛えるだけではなく肩こりや腰痛改善といった体の悩みを解決することをサポートしています。加圧トレーニングは短時間でも効果が見込めることから、月2回・1回30分からと、手軽に通えるものを含めて20種類と豊富なコースを用意し、どんなライフプランの方でも理想のコースが見つかるようにしています。
2. 反応ゼロが一番の恐怖、反応を得るためにひたすら行動した創業期
——1店舗目を開業されてからこれまでにおいて特に大変だったことは何でしょうか?
最初の3ヶ月間の集客が大変でした。新規の顧客が入らないので売上をカバーするために、指導の合間にチラシ配りや新聞配達などのアルバイトも経験しました。
集客の参考にしようと、経営がうまくいっているある接骨院のホームページ(以下、HP)を見てみたら、SEO対策で上手く集客していることがわかり、私も200万円ほどかけて専門業者にHPの制作を依頼しました。リリースから約3ヶ月目に検索ランキングで上位に表示されるようになり、4ヶ月目以降から順調に集客できるようになりました。
——集客がうまくいかない期間は不安であったと思います。どのようにして気持ちを安定させていたのでしょうか?
ブログを書き続けたり、チラシをまいたり、また営業に行ったりと、とにかく動いていました。学校の先生に「トレーニングとスポーツ整体ができます」と提案し、学生さんを紹介してもらったこともあります。売上が得られることが一番の安心要素なのですが、ブログやチラシ、営業に対してまずお客さまから何かしらの反応があるだけで、少し心が落ち着きました。“反応がない”ということが一番不安になるんですよね。
——「LEADING」を立ち上げたときは、まだ人々にとってパーソナルジムへの敷居が高かった時代だと思います。不安はありませんでしたか?
正直、どこまでニーズがあるかはわかりませんでしたが、スポーツ整体とトレーニングは人のためになるものだという確信はありました。
実際、開業してみたら、パーソナルトレーニングへのニーズがかなりあることがわかりました。当時はニーズに対してパーソナルトレーニングを受けられる場所がまだ少なかったので、価格が抑えめなところもプラスに作用し、さまざまな方面からお客さまが来てくれました。その勢いのままGoogle広告に「パーソナルトレーニング やせたい」というようなキーワードで広告を出稿したら予想以上に大きな反響があり、驚きました。
——そこから2年半後に2店舗目を開業されましたが、どのような点で苦労されましたか?
初めて人を雇用したのですが、そこでたくさん苦労しました。例えば、スタッフが「親族の結婚式があるのでこの日は夜7時にあがっていいですか?」と聞いてきたのでOKを出したのですが、当日、朝からそのスタッフが出勤してこないんです。スケジュールを確認してみたらなぜか終日休みになっていて。コミュニケーションの難しさを感じましたね。ほかにも、遅刻やルールが守れないスタッフがいたり。そもそも、会社としてのルール自体、整っていなかったと思います。
賃金・報酬体系においても、以前勤めていた医療機器メーカーと同じレベルで設定してしまったのですが、どうやらパーソナルトレーナー業には合っていなかったんですね。低さをスタッフから指摘されたこともありました。
——3店舗・4店舗目と広がりトレーナーさんも増えてくるとその辺りはさらに大変になったのではないでしょうか?
こちらの想いや考えをどう理解してもらおうか試行錯誤の日々でしたが、あるコンサルティング会社に依頼をしたことがターニングポイントになりました。その会社は「育ってきた環境が違うから、一人ひとり考え方は必ず異なる。異なる考え方をマネジメントで無理に合わせようとしなくていい。考え方ではなく数字をマネジメントしましょう」というような方針でした。
それからは、売上を高める要素である、リピート率や新規顧客獲得率などについて、目標数値に近づけるためにはどうすべきかという部分のサポートに徹しています。この方針にしたら経営が安定するようになりましたし、無理に相手の考えをこちらに合わせようとする必要がないので気持ちがかなりラクになりました。私にはこの方針が合っていたようです。
3. 生産性を高め、給与を高める。新業態でトレーナーへ還元したい
——今後進めていきたい事業はありますか?
5月から24時間ジムをリニューアルするのですが、通常の24時間ジムの中に、フリーランスのパーソナルトレーナーに利用してもらう個室のレンタルジムを設ける予定です。独立したばかりでまだ店舗をもつことが不安なトレーナーが活躍できる場所になればと考えています。
マンツーマンで指導するパーソナルジムはグループレッスンやセミグループレッスンと比較してどうしても生産性が下がるため、トレーナーの給与も低くなってしまいがちです。1人のトレーナーが運営責任者としてパーソナルジムに加えて24時間ジムの運営も見れば生産性が高まり、給与も高められると考えました。トレーナーにとってはサービスの幅を広げられますし、利用者にとってはトレーナーが常にジムにいてくれるという安心感につながります。パーソナルジムからの売上があることで24時間ジムの会費を下げられて、差別化にもつながります。4〜5年で10店舗くらいまで増やしたいと考えています。
——現在、課題と感じていることはありますか?
採用ですね。以前は募集を出せば100人くらい応募が来たのですが、競合が増えた影響で今は20人ほどに減ってしまいました。トレーナーという“人”が要のビジネスなので、良い人材を採用できるか否かが、今後サービスを展開・拡大していくうえで重要なポイントになると感じています。