九州にて8校を展開する「ダンススクールBRIDGE」(以下、ブリッジ)は、K-POPダンスを中心に指導するダンススクールです。近年は毎年のように韓国事務所の練習生として合格者を輩出しています。K-POPダンスの指導がまだ一般的でなかった2016年にブリッジを立ち上げた代表の橋本 祐里氏に、立ち上げ経緯や運営において注力している点について聞きました。
INDEX
PROFILE
橋本 祐里 ダンススクールBRIDGE 代表
大学からダンス漬けの毎日を送り、モデル、タレント、K-POPダンスインストラクターの経験を経て、2016年、当時はまだ珍しかったK-POPダンスを専門に指導するダンススクールBRIDGEを設立する。設立から8年間で韓国事務所の練習生としての合格者やデビューする者を多数輩出するなど着実に実績を積み重ね、今や韓国事務所からも注目されるダンススクールとなっている。
自身もアーティストのバックダンサー、MV出演、CM出演多数。K-POPダンスでは、コンテストの入賞経験多数、企業のお祭りやイベントへのゲスト出演、K-POP関連のライブ、イベントに多数出演するほか、日本最大級のK-POPイベント、DREAM ON!やKCONのステージにも多数出演しているなど豊富な実績をもつ。
1. K-POP好きが興じて始めたカバーダンスで注目を浴び、K-POPダンスの指導者に
—— 橋本さんがK-POPダンスに触れるきっかけは何だったのでしょうか。
ダンスが好きで高校生からダンスを習っていました。私が生まれた福岡・豊前市は人口が少ない地域なのでダンスを習える場所が本当に限られていて、毎週、電車に乗って自宅から遠いダンススクールに通っていました。だから本格的にダンスに取り組み始めたのは大学入学を機に福岡へ出てきてからです。
大学4年生の時に福岡ソフトバンクホークスの公式チアリーディングチーム「Honeys(ハニーズ)」に合格し、2年間活動しました。ちょうどその頃、日本でK-popの人気が出てきて、たまたま目にしたKARAのダンスを真似して踊ったのがカバーダンスを始めるきっかけとなりました。
—— そこからどのような流れでブリッジを立ち上げたのでしょうか。
あるダンススクールの方から「K-POPダンスを指導してくれないか」という相談を受けてレッスンを担当することになったんです。そのダンススクールで指導するうちに他からも声がかかって、4つのダンススクールを掛け持ちして指導していました。
そんな生活を5年ほど続けたんですが、周囲からK-POPダンスの指導者が出てきたこともあって、独立を考えるようになりました。当時はストリートダンスの中の1つのジャンルとしてK-POPダンスが指導されていたのですが、私はK-POPダンス専門として指導する場を作りたいと思ったんです。私の名前と「日本と韓国との架け橋になりたい」という想いを込めて「BRODGE」と命名し、2016年に立ち上げました。
—— 運営は最初から順調でしたか。
指導やイベントへの参加を通してそれなりに顔が知られていたので、ありがたいことに最初からたくさんの生徒さんが来てくれました。レンタルスタジオを利用していて固定費を抑えていることで、順調に校舎も増やすことができました。当時「いつか、ブリッジの生徒が韓国の事務所からデビューしてくれたら」と思っていた夢が今では、I’LL-IT(アイリット)のモカなど多くの卒業生がデビューしてくれて本当に嬉しいですし、彼ら、彼女たちを誇りに思います。
*BRIDGEの実績はこちらから
2. ダンスバトルでコミュニケーション力を育成、実績が出ることで韓国事務所からも注目
—— ブリッジには韓国でのデビューを目標に来る生徒さんが多いのですか?
多いです。そういう子に対しては、オーディションやイベントなど、チャンスにつながりそうな機会を多く提供するよう心がけています。ブリッジ立ち上げ当初は、K-POP事務所と強いコネクションをもつ方からオーディション情報を教えていただきましたが、近年は、向こうの事務所から直接「生徒をオーディションに参加させて欲しい」という連絡をいただけるようになりました。練習生としての合格実績も増えて、「このダンススクールには将来性のある子が多い」と感じてくれているんだと思います。
—— そこまでの生徒さんを育成するために、何か特別なカリキュラムを組んでいるのでしょうか。
ブリッジ主催でオーディションを実施し、準特別待遇制度という形式で10人ほどを練習生として迎える制度があります。その子たちには週5日はしっかりとダンスレッスンに取り組んでもらうほか、イベントにも積極的に参加させますし、SNSで自らをPRするために発信力を磨いています。SNSを通じて、生徒自身がどのような内容の発信をすれば良いかを考える習慣がつくことで、ダンス以外の部分でも役立っています。客観的に自分を見つめることで新たな気づきや学びが生まれ、その結果として自己成長に大きな効果を発揮しています。
入門、初級など5レベルからなるレッスンも提供していますが、これは他のダンススクールさまでも取り組まれていることだと思います。
—— 韓国のオーディション番組を見ていると、周囲とのコミュニケーション力なども審査されているようですが、その辺りを意識した取り組みは実施されていますか?
クラスの中を数チームに分けて、チーム対抗でダンスバトルを実施しています。チーム内には幅広い年代が揃うようにして、年長者をリーダーとします。衣装もダンス構成も全てチーム内で決めるので大変だと思いますが、これをやると生徒同士の絆がとても深まるんです。
3. 業態問わず必要!店舗運営に必要な人間性とビジネスマナー
—— スクール運営において、保護者から支持を得ることはとても大切だと思います。何か意識していることはありますか。
保護者が安心と信頼を感じてくれるような運営をすることと、しっかりとした実績を積み上げることです。その鍵を握るのがインストラクターです。ブリッジでは、ダンスのスキルや実績のほか、指導歴や人間性、時間厳守などのビジネスマナーを守れるかという部分をしっかりみて、採用しています。年齢は20代後半〜30代と、ダンススクールのインストラクターとしては若干高めかもしれません。
—— 人間性やビジネスマナーが大切ということは他の業種でもよく聞かれます。
とても重要です。ダンススクールのインストラクターの中には、ダンサーとしてずっとやってきたので社会人経験がなく、ビジネスマナーがきちんと身に付いていない方もいます。ここは業界の課題かもしれませんね。ブリッジでは、基本的に1年ごとの契約更新としているので、更新タイミングが改めてルールを意識していただく良い機会にもなっていると思います。
—— 運営がとても順調なように見受けられますが、現在抱えている課題はありますか?
2023年の12月にストリートダンスを指導する「トレーニングセンターG-STUDIO」を立ち上げたのですが、ストリートダンスは専門スタジオがすでにたくさんあるので、まだ集客が十分ではないんです。ストリートダンスを学ぶことはK-POPダンスが上手になるためにもとても有効なので、もっと多くの方に取り組んでほしいですね。
—— 身体一つでできるダンスは、運動への参加率を高めるきっかけとしてもとても良さそうです。
確かに「真似したくなる」ことは、運動参加への良いきっかけになると思います。「1ヶ月練習したらこれを踊れるようになるんだよ」と伝えたら、モチベーションも上がりますよね。
一番いいのは、「たくさんの人の前で踊る楽しさ」を感じていただくことだと思います。一度その楽しさを知ってしまうと、どんどん夢中になりますよ。イベントのオープニングアクトとして短時間でもいいので「1,000人の前で踊るよ」と言われたら、頑張ろうという意欲も湧くはずです。一般的なトレーニングが難しいシニアの方にこそ、ぜひステージに立って踊ってほしいと思います。