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地域課題に挑む大学生たち——神奈川大学サッカー部×竹山団地が示す「地域連携の新たな形」

2025.09.29

神奈川大学体育会サッカー部監督 大森 酉三郎氏(写真右)と特定非営利活動法人KUSC 高島 斉氏

サッカーの枠を越え、地域社会との関わりを通じて「人間力」を育む——神奈川大学サッカー部が掲げる“F+1”(※)の理念は、高齢化が進む「竹山団地」というリアルな地域課題と出会い、より実践的なステージへと進化しました。2020年に始動した「竹山団地プロジェクト」は、学生が実際に団地に住みながら、地域貢献・高齢化対策・子どもの居場所づくりなどに取り組む、革新的な地域連携モデルとして、教育関係者や地方自治体から高く評価されています。
※「Football + 何か1つ」という意味で、フットボーラーとして活動するだけでなく、社会参加にも取り組むことを指す

INDEX

1. 「学生が団地に住む」という新たな挑戦

「竹山団地プロジェクト」(以下、竹山団地PJ)は、神奈川大学、特定非営利活動法人KUSC(以下、NPO法人KUSC)、神奈川県住宅供給公社(以下、公社)が連携・協力しながら、連合自治会の全面協力のもと取り組む地域活性化プロジェクトです。発案者は神奈川大学体育会サッカー部監督である大森酉三郎氏。「サッカー選手としてだけでなく、1人の人間として成長してほしい」という願いから構想がスタートしました。

「サッカーの試合で自分が主役になれる時間は、ほんの一瞬。ほとんどは裏方に徹している時間です。その間に、いかに周囲のことを考えて行動できるかが、チームの成果や人間的な成長につながると考えています。人として成長することが、結果としてサッカー選手としての活躍にもつながるのです。そのためにも、地域社会と関わることが大切だと考えました」(大森氏)

この理念に共感した公社が、地域と大学・学生をつなぐコーディネーター役を担い、プロジェクトの具体化を後押し。学生の成長と地域の課題緩和に向けた、これまでにない取り組みが動き出しました。

活動の拠点に選ばれた竹山団地は、最盛期には1万人が暮らしていましたが、現在は約6,200人へ減少しており、高齢化率は約45%と区内でも特に高齢化が進んでいます。この団地でサッカー部の学生が実際に暮らし、住民と生活をともにしながら地域貢献活動に参加しています。

当初は保護者や住民から「サッカーに集中できなくなるのでは」「若者が多くなると騒がしくなるのでは」といった不安の声もありましたが、大森氏と公社、連合自治会が丁寧に対話を重ねたことで、2020年に竹山団地PJは正式にスタートしました。

地域課題に挑む大学生たち——神奈川大学サッカー部×竹山団地が示す「地域連携の新たな形」

野菜販売会の様子。休耕地を活用し、学生たちが自ら育てている

2. 竹山団地に広がる笑顔と信頼——5年の歩みが生んだ変化

プロジェクト開始から5年。学生たちは学業やサッカーに取り組みながら、地域の清掃活動や高齢者向けのスマホ教室の運営など、多岐にわたる活動を展開しています。2023年には、学生たちの手も加わって食堂跡地が改修され、地域食堂「竹山キッチン」がオープンしました。食材の調達からメニュー開発、運営まで、学生主体で行われています。休耕地を活用した農業体験も取り入れ、自分たちで育てた野菜も食堂に並ぶようになりました。

2025年には、低酸素ジム「空気研究所 竹山エアラボ」、さらに運動と交流の場である「未来研究所 竹山セントラル」が誕生。住民同士のつながりや、学生との新たな関係性が生まれ、団地に新しいコミュニティの形が育ちつつあります。

「学生たちは、住民からの『ありがとう』の一言や、就職活動での評価を通じて、自分たちの活動の意味を実感していきます。さんざん不満を述べた学生ほど割り切りも早く、自らリーダーとなって物事を仕切り出します」と大森氏は語ります。

一方の住民たちの間では、サッカーの試合を見に行ったり、差し入れを行うなど、サッカーや地域活動に一所懸命に取り組む学生たちを応援する気運が高まっています。神奈川大学が、2025年の2月に実施した住民向けの意識調査では、「団地が活気づいた」「学生から元気をもらっている」「挨拶してくれて気持ちがいい」など、様々な喜びや感謝の言葉が寄せられました。

地域課題に挑む大学生たち——神奈川大学サッカー部×竹山団地が示す「地域連携の新たな形」

低酸素ジム「空気研究所 竹山エアラボ」でのトレーニング風景

3. 高い運動参加率の裏にある“信頼”と“仕組み”——住民が動いた3つの理由

「空気研究所 竹山エアラボ」「未来研究所 竹山セントラル」の利用予約にはWeb会員管理システム「hacomono」が導入され、開始1ヶ月で団地住民の4%以上にあたる262名が登録しました。初月113万円の売上から8月末で10.8%伸びており、登録者も8月現在320名まで増加。想定を上回る成果が出ています。日本のフィットネスクラブへの参加率が3%と言われる中、高齢化率の高い竹山団地においてこれほどの成果につながったポイントは、以下にあると思われます。

・地道な関係構築がもたらした信頼

学生たちは長年の活動を通じて住民と強い信頼関係を築いており、運動教室で学生がインストラクターを務めるといった場面でも、「応援したい」「関わりたい」という住民の想いが自然な参加へとつながっています。

・LINE活用でITのハードルをぐっと低く

高齢者のIT利用に不安がある中、LINEと連携する「hacomono」は、そのハードルを大きく下げました。竹山団地PJに携わるNPO法人KUSCの高島 斉氏は「高齢者でも今はほとんどの方がスマートフォンを持っており、さらにLINEは日常的に使っている。だからこそ、LINEと連携できる『hacomono』なら大丈夫だと確信していた」と語ります。実際、86歳の住民も問題なく操作しています。

・目的が伝わる教室名の工夫

「未来研究所 竹山セントラル」では毎週18の運動プログラムおよび2つの健康セミナーを実施しています。導入1ヶ月間の参加状況を「hacomono」のデータから見ると、「リラクゼーション」よりも「転倒予防」といった、高齢化した住民にとっても目的や内容がイメージしやすい教室が人気であることがわかったため、今後はさらにわかりやすいネーミングへと改善を進めていく予定です。なお、予約画面はわかりやすさを重視し、多くの情報を載せずにシンプルにすることも心がけています。

地域課題に挑む大学生たち——神奈川大学サッカー部×竹山団地が示す「地域連携の新たな形」

「未来研究所 竹山セントラル」で実施された運動教室の一場面。学生もインストラクターを務める

4. 体の健康だけでなく、心にも変化——未来へつながる展望

「未来研究所 竹山セントラル」の活動開始からわずか1ヶ月で、「孫の誕生日に自分で買い物に行けた」「階段の上り下りが楽になった」など、住民からは多くの喜びの声が寄せられています。ご高齢の女性の中には、お化粧をして外出するようになるなど、体だけでなく心への前向きな変化も見られます。

導入から約半年が経ったところでは、筋肉量が2.5kg増加し、体脂肪率が5%減少した70代の方や、筋肉量が2.6kg増加し、体脂肪率が3%減少した80代の方もいるなど、身体的な効果もしっかりと現れ始めています。「タンパク質を意識して摂るようになった」という声も聞かれるなど、健康意識の高まりも、こうした成果を後押ししているようです。

さらに2024年からは、新たに子どもの居場所づくりにも取り組んでいます。たとえば、「竹山キッチン」では駄菓子の販売を行い、それをきっかけに訪れた子どもたちに対して、学生が宿題を教えるなどの交流を行っています。また、「子ども料理教室」と題した企画では、子どもたちと一緒に調理をし、100円という低価格で食事を提供する機会も設けています。高島氏は、こんなエピソードも教えてくれました。

「近隣の小学校で3年生を担当している先生が、子どもたちに“地域で印象に残っているもの”を尋ねたところ、その場にいた全員が『神奈川大学の駄菓子屋!』と答えたそうです。それを聞いた先生が驚いて、『竹山キッチン』に見学に来たことがありました」

こうした地域活動は、学生たちにとっても大きな学びの場となっています。コミュニケーション力やリーダーシップ、学業・サッカー・地域活動の両立を通じたスケジュール管理能力など、実社会で求められる力を養う機会となっており、それがピッチ上での連携や判断力にも影響を与え、競技力の向上にもつながっています。

「空気研究所 竹山エアラボ」と「未来研究所 竹山セントラル」のグランドオープンに先駆けて2024年12月に開催された竣工式では、神奈川県の黒岩知事から未病改善に向けた大きな期待の声も寄せられるなど、竹山団地PJは教育機関を含め、様々な方から今後の展開が期待されています。

教育、地域、行政の連携によって実現したこのプロジェクトは、教育現場や自治体が抱える課題へのヒントを与える貴重な事例となるでしょう。

地域課題に挑む大学生たち——神奈川大学サッカー部×竹山団地が示す「地域連携の新たな形」

「竹山キッチン」では子どもたちが気軽に利用できる場づくりに取り組んでいる

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