サービスや商品を購入したいと考えるとき、実際に体験した購入者の口コミを参考にする方も多いのではないでしょうか。店舗に寄せられるお客さまの声も同様に、支持される店舗運営をする上で重要な鍵となるものです。
そこで今回は、マーケティングの専門家である株式会社マーケティングデザインの代表取締役CEO廣見氏に、マーケティングの視点で「お客さまの声」をサービス改善に活かすノウハウを聞きました。
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PROFILE
廣見 剛利 株式会社マーケティングデザイン 代表取締役CEO
様々な業界の地域密着型マーケティングに従事。携わったスポーツクラブのプロモーションは、24時間ジムから総合型スポーツクラブまで100社以上。多くの地域密着型企業が人口の減少、Web広告の単価高騰やチラシの反響低下に苦戦する中、Webやチラシと同等の販促チャネルである「紹介」に着目。国内で唯一特許を取得している紹介キャンペーンアプリ「クチコプレミアム」の開発・販売を行い、現在では、金融やECなどへの領域へも利用が拡大している。
1. お客さまの声が「マーケティング」「サービス改善」の重要なヒントに
マーケティングとは、「売り手が提供する商品やサービスを、買い手がスムーズに受け取れる、すなわち売れる仕組みをつくる、市場を創造する」ことを指します。お客さまの声は、このマーケティング施策に大きな役割を果たすだけではなく、よりよい「サービス改善」のヒントにもなります。
1-1. マーケティングデザインとは?
廣見氏が代表を務める株式会社マーケティングデザインは、さまざまなマーケティングツールを活用し、営業活動を仕組み化して顧客獲得や育成などを支援する企業です。BtoB向けのマーケティングオートメーション(MA)の導入支援や活用支援、BtoC向けの店舗集客支援など日本企業が抱えるあらゆるマーケティングの問題に対応しています。
1-2. マーケティングデザインが注力する事業
マーケティングデザインが注力する事業は、マーケティングの「未知」「認知」の顧客に向けて、広告を通じて広めていくことです。どの業界にもいえることですが、新規のマーケットを増やしていくことは難しく、既存のお客さまをいかに大切にするのかが課題になっています。この両輪を大切にすることがマーケティングの原点です。
マーケティングデザインでは、これらを踏まえて、下記の事業に注力しています。
- 商圏範囲5km圏をベースとした店舗集客支援(BtoC)、フィットネスクラブや学習塾など地域密着型の集客支援
- BtoBターゲット向けの企業支援(営業活動の支援、企業マーケティング活動加速化の支援)
- 紹介キャンペーンアプリ「KUCHICO PREMIUM(クチコプレミアム)」の開発・販売(フィットネスクラブなどの現場の負担を少しでも減らすために、紙媒体の代わりに開発)
また、SFAやCRMもマーケティングデザインの事業を語るうえで欠かせない要素となっています。
1-3. SFAとは?
「Sales Force Automation」の頭文字を取り「SFA」と表現され、営業支援システムとも呼ばれ、ビジネスの場では定着しつつあります。営業にまつわる業務を仕組み化することで、営業活動の効率化を図るツールです。マーケティングデザインでは、さまざまなサービスを通してこのSFAを提供しています。
1-4. CRMとは?
「Customer Relationship Management」の略語である「CRM」は、顧客の氏名や所属など、顧客情報を管理するためのツールです。顧客との関係を管理し、今後の営業活動に活かせるよう、顧客とのよい関係を構築、促進できるようビジネスの現場で活用されています。
1-5. お客さまの声をマーケティングに反映させる
マーケティングデザインでは、このようなビジネスツールを有効に活用し、ウェルネス業界のみならずさまざまな企業のマーケティングを支援しています。今回は、そのなかでも「お客さまの声」にフォーカスし、マーケティングに反映させるためのアイデアやポイントをうかがいました。
2. お客さまの声を「マーケティング」「サービス改善」に活かす術
エビデンスを活用することは、マーケティングにおいて鉄則といわれています。そのなかでも最も説得力があるエビデンスが「お客さまの声」です。
例えば、フィットネスクラブであれば入会の動機はどのようなことであるか、どういった経緯で入会したのか、実際にどのような紹介を受けて入会をしたのかといったデータは、マーケティングやサービス改善に活かせるポイントになります。
2-1. お客さまの声を反映させるメリット・デメリット
お客さまの声は、最も説得力のあるエビデンスの1つですが、その声を反映させるには、メリット・デメリットの両方があります。
お客さまの声は、実際に購入したりサービスを利用したりとリアルな意見がダイレクトに伝わるという点でメリットがあります。しかし、特定の方の意見を聞き過ぎて方向性がぶれるといったデメリットもあるので注意が必要です。また、「適正価格ではない」といった希望などは受け入れ過ぎないこと、フラットに意見を聞く必要があることは押さえておくべき大切なポイントです。
2-2. お客さまの声をサービス改善に活かす具体例
お客さまの声をマーケティングやサービス改善に活かすためには、「入会時のアンケート」が鍵になります。
お客さまは、それぞれの悩みを解決するために入会するので、その声は広告に大いに活かすべきです。
また、当初掲げたペルソナは環境や状況に合わせて変わっていくものです。ペルソナとのギャップを随時埋めながら、市場環境によってはペルソナを変えざるを得ないこともあると理解しておくことが大切です。
特に意識したいのは、実際に来店されているお客さまと、広告文の内容の乖離を見直すことです。例えば、お客さまの声をもとに、広告に掲載された見出しを変更するのもおすすめです。すべてを見直すのではなく、変えるべきところと残すところをよく見極めましょう。
その見極めのヒントになるのが、他でもないお客さまの声なのです。
2-3. 広告に「効果的な言葉」を選定するためのヒント
お客さまの声のなかでも、セールスにおいて大きな影響を持つといわれているのが「購入のタイミング」で聞くことができる言葉です。お客さまがサービスを受ける、もしくはモノを購入するに至った理由は、最もわかりやすいお客さまの声そのものです。
購入時はもっともモチベーションが高まっているときです。だからこそ、アンケートを取りやすいタイミングであるといえます。この機を逃さずに、自社の課題は何か、課題の解決策へのヒント、競合との比較などを行いましょう。
その際に役立つのが、テキストマイニングツールです。テキストマイニングとは、大量のテキストデータから有益な情報を取り出す、掘り当てることの総称を指します。
スポーツクラブに入会した人が友達を紹介する理由をテキストマイニングした結果
2023年マーケティングデザイン調べ
人がこの作業を行うには膨大な時間を要しますが、テキストマイニングツールを活用すれば、お客さまが抱えている課題を「見える化」しやすくなります。例えば、お客さまアンケートの中にある言葉を抜き出すことで出現の頻出度が見えるため、これをエビデンスとして活用し、広告の文言に活かすのもおすすめです。
2-4. 集客、継続率、購買率を上げるために有効な施策は?
インターネットは、不特定多数にマーケティング活動ができることがメリットといえます。ですが、データを取ってみると、実はWeb広告経由よりも会員の紹介で入会した方の方が、継続期間が2ヶ月半ほど長くなっていることがわかりました。
このことから、新規を獲得するためにはWebを活用することが有効であるものの、実際に継続率が高いのは紹介キャンペーンということがわかります。
集客、継続率、購買率を上げるためには、やはり地道な紹介キャンペーンは大変有効な手段です。紹介キャンペーンを成功させる鍵は、告知に尽力することでしょう。既存のお客さまへのアプローチのため費用がかからないことも魅力です。
ですが、多くのフィットネスクラブは人員削減へと舵を切っており、現場で紹介キャンペーンを告知するのは負担が多いのも課題です。だからこそ、お客さまの入会時が告知しやすく本音を聞き出しやすいため、少し労力をかけてでもこのタイミングを逃さないようにお客さまの声を集めましょう。
紹介キャンペーンの特典で効果的だったという声が多いのは、デジタルギフトよりも焼肉セット、お鍋セットなど生活に即したわかりやすく手に取れるものでした。フィットネスクラブの会員は、食べることが好きな方が多いことも要因の1つでしょう。地元密着型で紹介キャンペーンを開催する場合は、季節に合わせたおいしいものをぜひ用意してみてください。
反対に、ECサイトはお客さまと接点がないため、デジタルギフトのほうが喜ばれます。アプローチ方法によって効果的なギフトを選定しましょう。
3. 外部パートナーと連携するメリットとデメリット
お客さまに一番近いスタッフでマーケティング活動を内製化することは有効な手段です。そのうえで、外部パートナーと連携することにも大きな意味があります。ここでは、外部パートナーと連携するメリットとデメリットを説明します。
3-1. 外部パートナーと連携するメリット
旅行代理店や広告代理店などの代理業の特徴は、情報が集約されていることです。外部パートナーが持つさまざまな情報を活用できることは、大きなメリットといえます。自社で情報を集めたり、発信したりする時間が取れない際には、大きな助けになるでしょう。
また、外部と接する機会を増やすことで、有効なデジタルツールが活用できるようになるなど、本業に集中する時間を増やせることも大きな魅力です。
3-2. 外部パートナーと連携するデメリット
外部パートナーと連携するデメリットは、費用がかかることです。フィットネスクラブには、マーケティング活動の内製化をおすすめしています。先ほども触れたように代理業の強みは情報が集約されていることですが、今は気軽にご自身で広告ツールを手配することもできる時代です。お客さまの声に近い店舗のスタッフが直接メッセージを作成するほうが、効果は高いでしょう。
4. マーケティング視点からお客さまにヒアリングする項目は?
マーケティングの視点から、お客さまの声を集めるためにヒアリングする際のポイントをまとめました。
4-1. どのようなお客さまにヒアリングするのか
フィットネスクラブなどでの初回体験によって、入会率が100%になることはまずありません。なかなか、自社の強みを見定められないときもあるでしょう。
ですが、何度も触れてきたように、購入者やサービスを受けるに至った方に自社の強みを聞くことがサービス改善の鍵です。
顧客アンケートをとる方法には、これといった決まったものはありません。Googleなどでテンプレートを簡単に探すこともできます。自社の方向性に合わせてカスタマイズして活用するとよいでしょう。
また、お客さまアンケートの内容は、スタッフを鼓舞するうえでも有効です。入会の際にどうして自社を選んでくれたのか、課題はどのようなことなのか、などの実直な質問へ寄せられたお客さまの素直な回答は、スタッフのモチベーションを上げるきっかけにもなることでしょう。ウェルネス業界のみならず、他の事業にも役立つマーケティングの鉄則です。
4-2. 入会理由の他に、ヒアリングすべき項目は?
マーケティングキャンペーンを行うにあたり、お客さまがどういった情報があれば喜ぶかを「+α」で聞けるとよいでしょう。一歩先を見据えた情報もヒアリングできれば、その後の事業に大いに役立ちます。
5. 集客のサービス改善施策で有効なものは?
数ある施策のなかで、集客のサービス改善に有効な手段はなんでしょうか。
5-1. 集客施策の中でも、特にLINEは注力すべき
集客においてサービス改善の施策を検討する際に、ポイントになるのは下記の項目です。
- お客さまを一元化しない、あらゆるお客さまの声を集める
- 新規を獲得し続けるだけではなく、既存顧客を育てることにも注力する
- SNSは発信しっぱなしにせず、その後にコンタクト、ご案内ができる状態にする
広く発信することで認知してもらった後、そのままにしておくだけでは顧客獲得にはつながりません。そこで有効な手段の1つが「LINEの友だち登録」です。
定期的に直接コンタクトを取ることができたり、ご案内を発信できたりするため見学や体験後にも、次につながるツールになります。友だち登録してくれた顧客のデータを整理し、活用できるようにすることが大切です。
5-2. サービス改善は少人数から始めよう
サービス改善をする際には、まず大人数ではなく何人かに絞り実施していくこと、少人数から試していくことも重要なポイントです。
サービス改善を実施する対象となるお客さまを選定したり、コミュニケーションの取り方を模索したり、コミュニケーションの頻度をどう上げていくのかということを検討したりする際にも「hacomono」のようなマーケティングツールが役立ちます。
これらのツールは多数あるため、比較して使ってみることをおすすめします。実際に使ってみなければ、自社にとって活用しやすいか、役立つのかはわかりません。まずは、自社に必要な項目を理解して、情報を集めた上で比較してみましょう。
6. まとめ
これまでご紹介してきたとおり、お客さまの声はマーケティング視点においても最も強いエビデンスの1つであり、お客さまの本音を聞きやすい入会時に集めることが重要であることがわかりました。
ですが、人の力だけではその分析や顧客管理などが難しい場合もあります。そのようなときに役立つのがマーケティングツールの活用です。上手にツールの助けを借りながら、お客さまの声をサービス改善に活かしてみてはいかがでしょうか。