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長く活躍できるトレーナー育成はビジネススキルを醸成する人材開発から

2023.07.03

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長く活躍できるトレーナー育成はビジネススキルを醸成する人材開発から

フィットネス業界の企業から、人材に関する課題としてよく聞かれるのが、「ビジネススキルの不足」です。具体的には、基本的な接客マナーや売上、ランニングコスト、集客数などの数値への意識が低いことが指摘されています。一方で、見方を変えると、彼らがすでに習得しているトレーニング知識や指導方法に加えて、ビジネススキルを強化できれば、企業としての成長の後押しになると考えられます。2022年より、その課題を解決するために人材開発にOKR(Objectives and Key Results)という手法を導入したパーソナルトレーニングジム「ELEMENT」を運営する株式会社MIGRIDS 代表取締役の鈴木 太郎氏に、導入後の具体的な取り組みとその効果について聞きました。人材育成に課題を感じている方の参考になる事例ですので、ぜひご覧ください。

INDEX

PROFILE

鈴木 太郎 株式会社MIGRIDS 代表取締役

メーカーでの勤務後、フリーランスとしてオンラインでの物販販売や、Webメディア運営事業などを手がけた後、株式会社MIGRIDSを起業し、「ELEMENT」を立ち上げる。1回30分、全店舗通い放題のほか、1回1,459円〜(※通い放題プランで1日1回、毎日通った場合)という、通いやすい価格で提供し、人々に運動を習慣化してもらうことに取り組んでいる。

公式Webサイトはこちら

1. ビジネススキルの補強が経営課題の解決につながる

私はメーカーで勤務したのち、2019年にフィットネス業界に参入して「ELEMENT」を立ち上げたのですが、そこで驚いたのが、トレーナーのビジネススキルの低さでした。

会員とのセッションで、敬語がきちんと使えずに友だちのように接してしまう、会員一人ひとりに寄り添ったお声がけができないなど、接客態度についてクレームをいただくこともしばしばありました。また、パソコンを操作した経験に乏しく、一般的に売上管理やスタッフの勤怠管理などに利用する表計算ソフトExcelや業者とのやりとりに使用するメールソフトなども使用経験のない者が多くいる状況でした。その影響もあってか、数字管理自体に苦手意識を持つ者も多く、体験者数や入会者数、売上など、ジムを運営するうえで重要な数字への意識が低いことにも、課題を感じました。

年齢を重ねても活躍できるトレーナーになってもらうためには、ビジネススキルを身に付けてもらう必要があると強く感じ、2022年より、代表である私とCOO(最高執行責任者)、さらにトレーナーとして高い経験値をもつスタッフの3人を中心に、まずは正社員の人材開発のカリキュラムから整えることにしました。外部からはコーチング(自発的行動を促すコミュニケーションのこと。気づきを与えることで、自ら目標を設定し、達成するよう導く手法を指す)の専門家に加わってもらいました。

2. ビジネススキルの醸成やトレーナーの公正評価を可能にする目標管理手法

カリキュラムのなかで最も力を入れたのが、OKRの導入です。OKRとは、「達成したい目標(Objectives)」と、目標までの達成度を測る「主要な成果(Key Results)」を設定することによって、企業やチーム、個人が、同じ方向を向いて目標達成に取り組めるようになる目標管理手法です。アメリカで誕生した手法で、近年は日本においてもベンチャー企業などを中心に導入する企業が増えているようですが、フィットネス業界で導入している企業はまだ珍しいのではないかと思います。

トレーナーのOKRの設定は、上期、下期それぞれで設定し、その目標を達成するためとして、さらに3ヶ月ごとに小さな目標および、その達成に向けて何に取り組むのかを設定しています。その内容は私とCOO、トレーナー本人の3人ですりあわせを行い、決定します。その後、COOは週1回、トレーナーと面談を実施して目標に対する進捗を確認しています。

OKRを導入した理由は2つあります。

1つ目は、トレーナーにビジネススキルを身に付けてもらうためです。数字への苦手意識を克服し、集客数や売上などの目標数値への意識を高めてもらうことは、企業を成長させていくためにも、必須だと考えました。

2つ目は、トレーナーを適切に評価するためです。以前はきちんとした評価制度を設けておらず、トレーナーから「何をもって評価されるのか、基準を知りたい」と聞かれたこともありました。指導したセッション数で評価していた時期もありましたが、次第にそれが正しくないことに気づきました。

「ELEMENT」は通い放題のパーソナルジムのため、会員によっては月に10回程度、利用する方もいれば、20回以上来る方もいるなど、利用頻度にかなりのばらつきがあります。さらに、会員はトレーナーを指名することができるため、偶然、頻度高く利用される会員からの指名が多いトレーナーは、必然的に指導するセッション数が増えることになります。利用頻度はお客さまのライフスタイルに影響を受ける部分も多いですから、トレーナー評価にセッション数を組み込むのは公平ではないと考え、評価対象から外すことを決めました。

セッション数を評価の対象としてしまうと、次第にその数をこなすことばかりに注力するようになり、自身のスキルアップや集客数など数値への意識もさらに遠のくことを感じました。

3. OKRの浸透により実現した「自主的に動けるトレーナー」の育成

OKRの導入にあたっては、トレーナーの一人ひとりに「OKRとは何か?」を丁寧に説明するところから始めました。トレーナーのなかには「良いレッスンを提供することが最も大事であり、それにより自然と売上などはついてくるもの。なぜ数値を追わなければならないのか」と考える者も多いように感じます。「ELEMENTが掲げる目標を達成するためには、一人ひとりのトレーナーが達成すべき目標にも数値が絶対に紐づいてくる」ということをしっかりと伝えました。こうすることで、「なぜ自分はこの数字を達成することが必要なのか?」と納得したうえで日々の業務に取り組むことができるはずです。さらに、一方的に目標数値だけを伝えた場合と比較して、数字に対する抵抗感も取り除いていけると考えました。

OKRを導入してまだ1年弱ですが、さまざまな効果を感じています。経営側で目標の進捗管理をすることで、成果だけでなく、目標に対して取り組んでいる過程も評価対象としてみることができます。トレーナーからは「普段の働きぶりをみた上で、評価をしてくれるので納得感がある」といった前向きな声が聞かれています。今のところ、評価者である経営側とトレーナー本人の評価に乖離も生まれていないため、OKRはうまく機能していると考えています。

OKRの考え方が浸透したことは、トレーナーの自主性を促すことにもつながりました。目標を達成するために何をすべきか自ら考え、指示されなくても実行できるようになっていったのです。「今月の目標集客数にはあと○名が必要だから、こういう施策をやろう」といった具体的な提案がトレーナーから出てくるようになりました。OKRを導入する前にはなかったことです。その結果、少しずつではありますが、OKR導入前と比較して売上のベースが上がってきているため、売上予算を10%高めました。

長く活躍できるトレーナー育成はビジネススキルを醸成する人材開発から

4. 指導スキルとビジネススキルの両立で年齢を重ねても輝ける人材へ

「ELEMENT」では、OKRのほかにも、約100時間の初期研修を提供しています。ここでのコンテンツは基本的な接客マナーや解剖学、トレーニング指導方法など、一般的なジムとそれほど変わらないかもしれませんが、先ほどトレーナーの課題として挙げた接客マナーについては、実際に会員へ送るメール文章などを作成し、外部講師に添削してもらうという項目を追加しました。

2ヶ月に1回、課題に合わせて正しい指導提案ができるかを確認する共通テストを実施しているほか、会員との実際のセッションに教育担当者が参加し、内容をチェックすることも行っています。セッション終了後にはすぐにフィードバックを行い、スピーディに指導内容をブラッシュアップできるようにしています。日頃の自然なセッションの様子をみる必要があるため、教育担当者がどのレッスンに参加するのか、事前に本人には伝えていません。

昨年末からは、私が2022年に習得した新たなコーチング技術を会員へのカウンセリングに導入しようと新たな研修を始めるなど、引き続き指導スキルとビジネススキルの両方を兼ね備えた人材育成に取り組んでいます。「年齢を重ねても、会員にセッションを提供していきたい」と考えるトレーナーは多いと思いますが、年齢が上がるとともに、リーダーとして施設運営を任される日がくるかもしれません。また体力的な面からも、それまでのようなセッション数をこなすことが難しくなり、施設運営側に転向することも考えられます。どのような道を選んだとしても、新たな立場や役職で輝ける人材を育成していくことは、企業側にとってもトレーナー本人にとっても非常に大切なことだと考えています。

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