愛知県名古屋市に本社を置く株式会社リィ(以下、Lii)は、「世界80億人を運動でドキドキさせること」をミッションに掲げ、「Lii sports」「FITNESS & RECOVERY ACT」「HARU FIT TOKYO」「Lii learning studio」などのサービスを展開しています。北海道から沖縄、さらにはインドネシア・ジャカルタまで、国内外において運動で人々の心と体を健康にするため、「誰もが息をするように運動できる世界」を目指しています。今回は、同社創業者であり代表取締役の廣瀬あゆみ氏に、事業の方針とリィが描く未来についてお話を伺いました。
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PROFILE
廣瀬 あゆみ 株式会社リィ 代表取締役
武庫川女子大学健康スポーツ科学部卒業。通信会社での営業企画、進学塾での事業開発、医療福祉ベンチャーでの採用広報などを経て、株式会社リィを設立。「すべての子どもに良質な運動機会を提供する」ことを事業ビジョンとし、「Lii sports」を全国30店舗以上展開。2024年には、革新的かつ潜在成長力の高い事業や、社会的課題の解決に資する事業を行う志の高いスタートアップの経営者を称える表彰制度「Japan Venture Awards」にて地域貢献特別賞を受賞した。
1.「運動がすき、運動がすきな自分がすき」子どもたちが運動を好きになる「Lii sports」
—— 「Lii sports」「FITNESS & RECOVERY ACT」「HARU FIT TOKYO」「Lii learning studio」など複数の業態を展開されています。まず、リィが掲げるミッションについて教えてください。
「運動でドキドキがあふれる世界をつくる」ことが、リィのミッションです。文明が発展し生産性が上がったことで身体活動(運動)が減ってしまった現代。人間が健康に生きるための4要素の一つとされる“運動”をもう一度日常に再創造し、運動を生活に自然に溶け込ませることを目指しています。生活スタイルを大きく変えるのではなく、「リィのサービスに関わっていたら、いつのまにか運動している」という感覚で運動を取り入れてほしいと考えています。
—— 現在、もっとも中心となっているサービスは「Lii sports」でしょうか。
そうですね。「Lii sports」は「運動がすき、運動がすきな自分がすき」をコンセプトに、少人数制で一人ひとりの子どもの課題に合わせた運動機会を提供しています。主な対象は、発達に課題があり、例えば一般的な運動教室では対応が難しいような、良質な運動機会に恵まれづらい子どもたちです。
—— サービスの特徴について教えてください。
「心拍を上げる=ドキドキする」ことに重きを置いています。また、DEA2000という自社開発のデジタルコンテンツを活用したゲーミフィケーションなプログラムによって、楽しみながら運動習慣を身につけられるよう工夫しています。スキル習得よりも、「運動そのものを好きになってもらう」ことを最優先にしています。そのために“褒める”ことを徹底しており、保護者の方からは「家ではできないほどささいなことも見つけて褒めてくれる」と高い評価をいただいています。
—— お子さんたちにはどのような変化がありましたか。
運動会に参加できなかったお子さんが参加できるようになったり、跳び箱が苦手だったお子さんが“大好きな恐竜になりきる”ことで跳べるようになったりと、うれしい変化がたくさんあります。自信がついたことで、一般のテニススクールに通い始めるなど、次のステップに進むケースも増えています。
デジタルコンテンツも活用し、楽しく運動できる環境を提供
2.「Lii ism」を体現するスタッフたちとともに作り上げる企業カルチャー
—— 直営で複数ブランドを展開し、意思決定のスピードも速い印象です。どのような企業文化を築いているのでしょうか。
最上位の理念として「ドキドキがあふれる毎日を運動でつくる」があります。その下に、スタッフ全員が体現すべき行動指針「Lii ism」を設けています。「Lii ism」は3層構造になっており、全メンバー共通の「Regular ism」としてMore Playful! ・More Healthy! ・More Clear!という3つの姿勢を掲げています。さらに、高みを目指す「Advance ism」、経営を牽引する「Board ism」があります。
—— 採用時に重視している点は?
過去のキャリアよりも、「Liiの理念に共感できるか」「Lii ismを体現できるか」を最も重視しています。カルチャーに合うかどうかが基準で、いくら優秀でも合わないと感じた場合は採用しません。
—— 採用後の育成はどのように行っていますか。
「育ちたくなる仕組み」「頑張りたくなる仕組み」を整えています。その上で、金銭的な報酬だけでなく精神的な報酬も含め、「頑張ってよかった」と思える環境づくりを意識しています。また、年一度の全国の社員が集まり運動をする全社会「ALL FLAGS」など、Liiらしさを感じられるイベントを開催し、「どうしたらもっと面白い?」「ドキドキするポイントはどこ?」とスタッフとともに考え続けています。
—— 顧客からの声を吸い上げる仕組みもあるそうですね。
はい。お客さまの声は本部に直接届くようにしています。LINEのリッチメニューにホットラインを設置し、いつでも意見を送れるようにしているんです。現場でも話しやすい雰囲気づくりを大切にし、年1回の顧客満足度アンケートでは、NPS(ネットプロモータースコア)を計測しています。 「続けるべきこと」「始めるべきこと」「やめるべきこと」を定性アンケートで取得し、ワード分析を行って次年度の施策に反映している他、全スタジオの支援を常時カメラで接続し、支援の質も維持することを心がけています。
より良いサービスづくりに向けて、スタッフで意見交換(写真右:廣瀬あゆみ氏)
3.ライバルは世界最大のスポーツ用品ブランド!国内外各地への意欲的な事業展開で、10兆円企業を目指す
—— インドネシアで女性専用フィットネススタジオ「HARU FIT TOKYO」を立ち上げられました。なぜインドネシアを選ばれたのでしょうか。
フィットネス市場の成長余地があり、日本からもアクセスしやすい東南アジアの中で、人口が増加傾向にある点からインドネシアを選びました。
—— 文化も異なり、運営は大変ではありませんか。
20代後半の女性社員が単身赴任し、現地で奮闘しています。現地で会社を経営している日本人の方にも支えていただきながら、現地スタッフの採用と教育を進めています。文化や感覚の違いに苦労もありますが、任せた以上、責任は私にあります。彼女が全力で取り組んでうまくいかないなら、それは私の責任。そう考えています。
—— 今後の展開について教えてください。
私たちはとある世界最大のスポーツ用品ブランドをリスペクトし、だからこそ超えるということを目指しています。現在のLiiの事業規模は約15億円。その会社の10兆円に近づくには、まだまだ挑戦が必要です。 「Lii sports」は5年で全国200店舗体制を目指し、「Lii learning studio」では「運動してから勉強する」という新たな学習スタイルを広げていきます。さらに、インドネシアに続き、ドバイなど海外展開も強化し、世界中に“運動することが当たり前の文化”を広めていきたいと考えています。
—— 積極的にお客さまの声を吸い上げて改善していくスピード感や、若いスタッフの方に海外での挑戦の機会を任せている点も、とても素晴らしいと感じました。今後の店舗展開も楽しみにしています。本日はありがとうございました。
2025年9月、女子サッカー元日本代表・川澄奈穂美選手(写真右:現WEリーグ アルビレックス新潟レディース)とアスリートパートナー契約を締結。アスリートの社会的価値向上と地域・企業の共創を目指す取り組みを推進していく
